2019年現在。
NHK・連続テレビ小説は100作目の節目を向かえています。
記念すべき100作目は広瀬すず主演『なつぞら』。
大森寿美男氏のオリジナル作品で、大森氏が連続テレビ小説を手掛けるのは『てるてる家族』(2003年度後期)に続いて2回目のことです。
『なつぞら』は、北海道の「開拓者精神」をテーマに、「開拓者精神」とアニメーションを重ね合わせて「一つ一つの積み重ねが大きな形になるということを伝えたい」との思いが込められた作品です。
さらに大森氏は、そんな『なつぞら』の主人公・奥原なつのヒロイン像は、「自分の意思を貫いて生きていくヒロイン」という従来の朝ドラヒロイン像とは異なり、「人の心に流されながら、出会いと関わりのなかで、人生を見いだしていくヒロイン」だと語ります。
これまでもたくさんの魅力的なヒロインたちを生み出してきた「連続テレビ小説」。
そんなヒロインたちの笑顔や、頑張る姿に私たちはどれだけ元気をもらってきたことでしょう。
今回は、そんな魅力的な朝ドラヒロインたちをご紹介します。
谷村(田倉)しん(『おしん』1983年4月~1984年3月)
原作・脚本を『渡る世間は鬼ばかり』で有名な橋田寿賀子さんが務めた今や伝説的な作品です。
また主人公おしんは、幼少期を小林綾子さん、青年期を田中裕子さん、中年期を乙羽信子さんが演じました。
1983年(昭和58年)。
スーパーマーケットチェーンの経営者である田倉しんが、行方を眩ましたところから物語は始まります。
彼女に孫同然に可愛がられていた大学生・矢代圭はおしんが語ってくれた思い出話を頼りに山形県へ向います。
そこで圭は、おしんの過去を知ることになるのです。
幼少期、貧乏がゆえに奉公に出されたおしん。
理不尽な扱いを受けながらも、様々な人たちと出会い成長していくおしん。
明治後期~昭和後期というこの時代、女性が強く生きていくには相当な覚悟が必要だったことでしょう。
そんな時代が、一人の女性を強くしたのでしょうね。
川嶋うらら(『天うらら』1998年前期)
大工の道を志すヒロイン、川嶋うらら役を須藤理彩さんが、うららの師匠を小林薫さんが演じました。
私は学生時代、介護福祉の勉強をしていた時ふとこの作品のことを思い出しました。
というのもこの作品、当時あまり注目されていなかった「バリアフリー」を題材としていたからです。
大腿骨頚部を骨折して入院した祖母のために、安全な家について考えるうららでしたが、それはただ安心なだけで、体の不自由な人の気持ちに寄り添っておらず、祖母と意見が食い違ってしまうシーンなど未だに心に残っています。
今は当たり前になりつつあるバリアフリーですが、この時代バリアフリーに注目するとは、今考えると最先端のドラマだったんですね。
また、女大工というのもなかなかかっこよかったです。
有森(松井)桜子(『純情きらり』2006年前期)
ヒロイン・桜子を宮崎あおいさん、少女時代を美山加恋さんが演じました。
このドラマのなかで、美山加恋さんが味噌の樽の中に落ちるシーンは非常にインパクトがあり、今でも覚えています。
幼い頃、母親を病気で亡くし、男手ひとつで育てられた有森家の三姉妹。
三女の桜子は、持ち前の明るさと行動力で戦争に翻弄されながらも一途に音楽を愛し続けました。
いつでも笑顔と前向きな心を忘れない桜子は、まさに憧れの女性像そのものですね。
様々な人との出会いや、出来事を経た末、遠回りはしたものの幼馴染である八丁味噌蔵元「山長」の一人息子、松井達彦と結ばれます。
戦争で出征していた達彦が帰ってきたシーンでは涙が止まりませんでした。
その後、達彦との子どもを妊娠しますが、桜子が結核に罹患していることが発覚し、出産後すぐに我が子と隔離されてしまいます。
そんな桜子のために、輝一と名付けた我が子の姿を達彦は8ミリフィルムに収め、桜子に届ける。
最終回を迎えながらも、作品中、桜子は我が子をその胸に抱くことはありませんでした。
しかも、ヒロインの生死が不明のまま終わるという異例の最終回だったため、NHKには質問の電話が殺到したのだとか。
天野アキ(『あまちゃん』2013年前期)
東日本大震災から2年後、フィクションであるドラマのなかに震災が織り込まれた作品です。
2008年(平成20年)の夏、ヒロインの天野アキは母・春子に連れられ春子の生まれ故郷、岩手県北三陸市袖が浜を訪れます。
東京では、暗く引っ込み思案だった自分を変えたかったアキは祖母・夏のもとで海女になることを決意し、北三陸市に移住することに。
その後、町おこしのために行ったミスコンでアキの友人・足立ユイが初代「ミス北鉄」に選ばれたことをきっかけにユイと共に「潮騒のメモリーズ」というご当地アイドルユニットを結成し大人気になります。
その後、地元アイドルたちを集めたアイドルグループのメンバーとしてスカウトされたアキは東京でアイドルになるために奮闘します。
そして、2011年。
東日本大震災が発生。
アキは再び北三陸に戻り、地元アイドルとして復興に携わることになります。
『あまちゃん』が世間に与えた影響は非常に大きなものでした。
「あまロス」になった人も多いのではないでしょうか。
この年、アキが驚いた時に発する「じぇじぇじぇ」は流行語大賞を獲得し、紅白歌合戦では、ヒロインを演じた能年玲奈さん(現・のん)とその友人ユイを演じた橋本愛さんが「潮騒のメモリーズ」として登場。
また、サプライズとしてアキの母・春子役の小泉今日子さん、女優・鈴鹿ひろ美役の薬師丸ひろ子さんが登場、審査員席にはアキの祖母・夏役の宮本信子さんが座っていらっしゃいました。
また、震災時の被害状況を模型で表した手法には大きな反響がありました。
なにより、時にはちゃめちゃなストーリーでありながら、どんな苦難にも負けないアキちゃんの笑顔と強さに日本中が元気づけられました。
卯野(西門)め以子(『ごちそうさん』2013年後期)
無鉄砲で食いしん坊のヒロイン・め以子役をモデルで女優の杏さんが演じました。
自由恋愛で条件のよい結婚をしたいめ以子でしたが、料理や家事にまったく興味がありません。
しかも実家は西洋料理店のため、いつだって美味しい物が食べられる環境にあるのです。
ある日、帝大生の西門悠太郎が下宿生として卯野家にやってきます。
始めは、自分に対して毒舌な悠太郎のことをよく思っていなかっため以子でしたが、悠太郎に勉強を教えてもらったことをきっかけに少しずつ彼に想いを寄せていくようになります。
そして、縁談が勧められたことによって、め以子は悠太郎への本当の気持ちに気がつきます。
そしてめでたく結ばれた二人の間には三人の子供に恵まれます。
しかし戦争により家族は離ればなれになってしまいます。
料理人を目指していた次男は戦死。
長男が無事帰って来たときは、本当に泣きました。
ちなみにこの長男役、人気俳優の菅田将暉さんが演じていました。
そして最終回、戦地から悠太郎さんが帰ってきて、二人でチョコレートを食べるシーンはラブラブすぎてきゅんきゅんしちゃいました。
ちなみに、杏さんと悠太郎役の東出昌大さんが御結婚して、本当のご夫婦になられたことはもちろん皆さんご存知ですよね。
また、登場人物の一人一人がとても個性的かつ魅力的な作品でもありました。
今井(白岡)あさ(『あさが来た』2015年後期)
大阪を拠点に活動した女性実業家、教育者の広岡浅子の生涯をモデルとした作品です。
ヒロイン・白岡あさを波瑠さんが演じました。
どんな困難にも負けないあさの強さは、お茶の間に元気や勇気を与えました。
まさに、女性実業家のパイオニアといえる人物です。
また、作中には、新選組の土方歳三や五代友厚などが登場しました。
特に五代友厚を演じたディーン・フジオカさんの人気が爆発し、五代友厚が志半ばで死を迎えると、世間はたちまち「五代ロス」に見舞われました。
また、主題歌のAKB48の「365日の紙飛行機」は毎朝皆さんの心に癒し運んでくれたのではないでしょうか。
私が一番注目したのは、最終回、あさが女性のための勉強会を開いていたシーン。
この中には、『花子とアン』の主人公のモデルとなった村岡花子も参加していたんです。
朝ドラと朝ドラが、人と人の人生が繋がったような気がして、このことを知った時は、妙に感動してしまいました。
まとめ
朝の連続テレビ小説は、毎朝私たちを楽しませてくれますが役者さん、特にヒロイン役の方は大変な思いで収録に臨んでいるそうです。
なんでも、絶対に1回は過労で病院に運ばれるんだとか・・・。
過酷な現場ですよね。
波瑠さんも、朝ドラが終わったら女優を辞めようと思っていたともおっしゃっていました。
そんな彼女たちが全力で演じたヒロインたちだからこそ、ここに書ききれなかったヒロインたちも含め、私たちの心に残り、憧れ、目標になっていくのでしょうね。
これからも、たくさん生まれてくるであろう朝ドラのヒロインたち。
そんな彼女たちを応援していきたいですね。