長いこと多肉植物を育てていると、不思議な現象に出会います。元気に育っているのになぜか形がおかしくなっていく。あやしい、もしかして綴化?
多肉植物に限らず植物に時々起こる綴化現象は、なんだか変だけど妙にそそられます。
というわけで、今日は多肉植物の綴化について書いてみました。

植物の綴化(てっか)とは?

ラミレッテ

植物に詳しい人は、「いまさら綴化かい?!」とお思いでしょうが、とりあえず話の流れで説明させてください。

まずこの「綴化」、いまいち読みにくくてイライラします。「せっか」と読み間違えられることが多いのですが、正しくは「てっか」です。そう、あのおいしそうなマグロの…ってあっちは鉄火、こっちは綴化。ネットで検索するときは「テッカ」とカタカナで打ち込むのがよろしいかと。
ちなみに綴化は「帯化(たいか)」「石化(せっか)」とも呼ばれます。上の画像はエケベリア属ラミレーテの綴化苗。中心部に葉が密集してカッチカチ状態です。まさに「石化」ですね。

綴化現象が起こるのは、植物の成長点の組織が何らかの異常を起こし、本来点状だったものが線状に成長するためです。その原因は遺伝的なものだったり、ウイルスや菌によるものだったりと様々です。一時的に綴化するものもあれば、ずっと綴化のままのものもあります。

普通だったら普通に成長するはずの苗が、普通なのに普通じゃなくなる不思議な綴化現象。しかも「可愛いくてなんぼ」の多肉植物がこのような姿になってしまうわけですが、多肉愛好家にとっては恐いもの見たさからか珍しさからか、それはそれで気になります。

多肉植物が綴化すると?

まず、身近なところでセダム属の乙女心。
普通はこんな感じです。(かわいいですねー)
普通の乙女心

それが綴化すると…。

乙女心石化

新芽の形状が、どことなく普通のものとは違いますよね。でも相変わらず可愛いです、上から見ると。しかし、茎の部分はというと…。

乙女心

えぐいですねー。面白いですねー。
成長点が「成長線」として成長すると、茎がこのように幅広状になるのです。帯みたいに見えるから「帯化」と言われるのがよくわかります。
これを「キモい」という意見もあるのですが、見れば見るほど謎めいて、個人的にはむふふな気分になります。

その他にも多肉植物で綴化しやすい有名どころがエケベリア属「イリア」。

イリア

わちゃわちゃしていますが、よく見ると中心部に葉が線状に出ています。
イリアは「月影の宵」や「クリスタル」という別名でも出回っています。何も知らなかった私は「イリア」と「月影の宵」と「クリスタル」を別々に購入して別々の鉢で育てていましたが、綴化したのは「イリア」として購入した苗だけ。購入当初はよくわからなかったのですが、成長につれて綴化がはっきりしてきました。
これらが本当に同一種なのか、かなり疑わしい気がします。メルカリなどでもよくイリアの綴化苗が出品されていますが、クリスタルや月影の宵とされる苗の綴化は見たことがありません。もしかして3つは限りなく近い遺伝子を持った品種で、その中の一つが綴化しやすい性質を持っていたために名前が分けられたのかもしれませんね。

続いてやはりエケベリア属「高砂の翁」。

高砂の翁

暑さで葉が開いてちょっとわかりにくいですが、高砂の翁はとにかく綴化しやすい品種。ホームセンターや園芸店で売られているものでは、綴化していない苗が珍しいくらいです。お手頃価格で育てやすい割に、なかなかゴージャスなルックスなので、多肉初心者の方にもおすすめです。

多肉植物が綴化するとき

植物なら百合や向日葵などの花や、野菜も綴化します。興味がある方は「植物 綴化」で画像検索してみてください。衝撃的なのは茄子の綴化。それからイチゴを買って綴化したのが入っていると、卵を割ったら黄身が2個入っていた時みたいな得した気分になります。(笑)
他にもあんなものやこんなものが…。話し始めると頭の中でテッカが止まらなくなるので、話を多肉植物に戻しましょう。

普通の苗がある日突然綴化したという話は、殆ど聞いたことがありません。多肉生産者さんのようなプロの手にかかれば可能なのかも(かも、です)知れませんが、一般の多肉愛好家さんが普通苗を意図的に綴化苗にする方法は、今のところないようです。

しかし実際育てていると、確率的には低いものの新しく出た芽が綴化することがしばしばあります。綴化の発現には、発芽時の状態が多少なりとも関わっているのではないでしょうか。日常で綴化苗が生まれるのは、だいたい次のような場合です。

①葉挿しから発芽した芽が綴化する
②親株の脇から出た新芽が綴化する
③徒長した部分をカットした後、新芽が出て綴化する

これらの3パターンは、いずれも遺伝子が原因だと思われます。そのため成長してもずっと綴化状態を維持しますが、病気(細菌やウイルス感染)で一時的に成長点がやられて綴化状になったものは、回復すればまた正常な成長点を持つ新芽が出て、やがて元の状態に戻ります。

成長点を針みたいなもので意図的に傷つけたら成長点が線にならないか、という面白い試みを見たことがありますが、私の経験上それはないと思います。というのも数年前、成長点にびっしりついたコナカイガラムシをブラシでゴシゴシ取り除いてボロボロにしたことがあります。家族からは「再起不能」と言われても回復したその苗は、数か月かけてすっかり元のきれいな姿に戻りましたから。

葉挿しから綴化が進む過程

去年の秋、石蓮花錦の葉挿しから出てきた芽がすごいことになっていたので、どんなふうになるのか気になってずっと観察していました。葉挿しの芽があやしいのはこんなかんじです。(ひゃー、かわいい!)

石蓮花錦

だんだん大きくなってきました。さらに他の葉挿し苗と一緒に様子を見ながら数カ月。
ずいぶんしっかりしてきたので、この辺で様子を見てみましょう。
こうして並べると一目瞭然ですね。
(※鉢から苗を引っこ抜いて根に絡んだ土を落とす時、「雪見大福」についているフォークはとても便利です)

石蓮花錦葉挿し

先ほどのあやしい葉挿し。茎の部分が他と違って幅広です。綴化に間違いないようですね。(ふふふ、君はVIP待遇にしてあげよう…)

石蓮花石化

綴化で苗の価値は上がる?

ラクテア冠

綴化は突然変異に近いので、普通の苗より数が少なく希少性が上がります。そういう意味では一部のマニアにはうけるものの、純粋にその品種を楽しみたい人には敬遠されることも確かです。また、先ほど紹介した例のように、綴化しやすい品種は流通も多いため価値的には普通の苗と殆ど変りません。綴化しにくい品種がたまたま綴化すれば、かなりの確率で価値が上がります。

多肉植物と違って、サボテンの綴化ではまた事情が違うようです。綴化サボテンの画像をみると多肉植物より見た目のインパクトが強く、植物というより生物のような力強い印象があります。流通価格から見ても、綴化マニアは多肉愛好家よりサボテン愛好家に多いようです。

いずれにせよ、綴化苗の価値は品種や手入れの仕方、成長の度合いによって大きく変わります。

綴化植物の管理で注意すること

最後のおまけに綴化植物の管理についてです。見ての通り、多肉植物は綴化すると必要以上に葉が密集してきます。当然通気が悪くなり葉の隙間に害虫が発生しやすくなるため、定期的なチェックが欠かせません。
また、茎から脇目が出ると親株が弱ってきれいな綴化状態(?)を維持できなくなるので、脇芽はこまめにカットすることが必要です。

それでも綴化は面白い!

多肉植物を見たことも育てたこともない人に綴化した苗を見せたら、きっと「多肉植物ってこんな変な形をしたものなんだ」と思われてしまうでしょう。
綴化を楽しめるのは、綴化していない苗の本来の魅力を十分知っているから。大切に育てた苗から偶然発生する綴化現象によって、多肉植物の新たな魅力を感じることができるのです。

鉢を持ち上げて綴化の進み具合を観察し、これからどんなふうに育っていくんだろうと幸せな妄想をすることは、綴化植物を育てる醍醐味です。そして私は今日も、どこかに綴化した芽を出している多肉の葉っぱが転がっていないか、ベランダや玄関を探しています。