序文

 7月ももうそろそろ終わるという頃にちょっとした思い付きで強行した新島突貫旅行、滞在3日目は出港する日でしたが訪れる前に見た予報では悪天候、すでに帰れるか怪しいさまでしたが午後便が全便欠航になると現実味がさらに増しました。(島にもっと居たい筆者としてはにやり)延泊の可能性もある中、目覚めると散歩でまた往復1時間強歩き、しかもまた蚊の集中砲火を浴びた後に口にしたのはまさに夏の味にふさわしいものでした。朝っぱらから夏野菜カレーです。

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「朝メシ」の前に

 新島にいた間はくさや屋兼ゲストハウスの主から「船は出んかもしれんけどそうなったら来る予定の客がこれなくなるからその時は遠慮なく泊まればいいさ」と言われていた。普通なら帰れるように願うはずだが筆者はむしろその真逆だった。筆者は院生だが諸事情あってか筆者の大学の夏休みは始まりが早い。他の国公立大学がまだ期末試験も始まっていないときに我々は一足早く夏休みに入るのでおかげでこの時期にこうして島にいられるわけだ。

おかげさまで当分は課題と修論に向けた情報収集を除けば急ぐ用事がない。しかも筆者のチェックアウト日は見事に満室だったのでこれに味をしめて「はからずも」延泊してしまう気でいたものだ。結論から言うとそれは叶わなかったのだが。序盤でネタバレしてしまうとは筆者はなかなかつまらぬやつだ。

 それはそうと、新島滞在3日目にして予定通りなら最終日になるわけだが、万が一予定通り出港してしまう(なんという表現を使っているのやら)場合に備えてまた往復が1時間を超える散歩に出ることにした。時計は午前6時を指している。一番早くても8時半まではどこも開店しない。昨日(食物語第5、6回)は腹10分目まで食べたのでそれを消費しつくすのにも丁度いい。

こうしてまた冒険的な散歩が始まった。目的地は初日に行った羽伏浦海岸、今回はその南側に向かって歩いて時間が許せば白ママ断崖の手前まで行こうと考えていた。手前と言ったのは白ママ断崖自体は海と断崖の間の浜の幅が狭い上に崩落の危険性が高いので立入禁止になっているためだ。また、地元住民にとっては神聖な場所でもあるので立入禁止になってしかるべきだろう。

 着いてみれば朝日を浴びる白い断崖がとてもまぶしい。蚊の集中砲火を浴びた足を海水につけようにも、干潮だと波打ち際までの高低差は1m近くはある、しかも直角に落ちる。これでは登るのが大変だ。結局白ママ断崖まではいかず途中の階段で陸に戻るのだがそこがしばらく獣道でたちまち蚊の集中砲火を浴びた。体力は削った、どんな量の朝食もかかってこいといった具合である。食欲は十分に整った筆者だった。
 
 いくら食欲が整ったところで蚊の集中砲火を常態的に浴びている状態(虫よけをしなければ当然の結果だが)で痒さも尋常ではなかったのでまずはひとっ風呂浴びてから朝食を食べれるところを探す。くさや屋兼ゲストハウスを出てからわずか一分、「朝メシ」をみつけた。その「朝メシ」をやっている店はグーグルの言う通りだと思いっきり営業時間外のはずだが「朝メシ」をやっているくらいだから開いてないはずがない、いや、「営業中」という札が立っているから間違いなく開けている(笑)。

「朝メシ」は夏野菜カレーだけ

 店の名はサンシャイン、中に入れば南国情緒にあふれる居酒屋と言った具合だ。それだけに雰囲気ものんびりしているのだがこの店は実に雰囲気以上に楽しくのんびりしているものがある(笑)。さて、例の「朝メシ」だがメニューはひとつだけしかない。それこそ今回取り上げる「夏野菜カレー」である。店の主?に「カレーしかないけど大丈夫ですか?」と言われた筆者はこう返した。「お願いします!!」やれやれこれじゃまるで飢えてたみたいじゃないか(笑)。

 それはそうと、待っている間は人間観察をする。人間観察とは言っても店にいた人間は筆者を含めて4人だけ、その内2人が店の主と思われる。さすがに週末の朝だから起きている人がもともと少ないのかこれまで平日だったから来島客があまり多くないのかのどちらかだろう。ともあれ、濃密な人間観察になりそうだった。

夏野菜カレー

 そう長い時間も待たずにそれはやってきた。果たして5分も待ったか分からないほどだ。食べる前に店の雰囲気も分かる写真をもう1枚載せることにしよう。

夏野菜カレー

 夏野菜カレーとだけあってなかなかゴロゴロしたカレーになっている。筆者が記憶している範囲内で中にはかぼちゃ、ソラマメ、サツマイモ、…..他にももっと入っていた気はするが生憎忘れてしまったようだ。野菜以外では鶏肉も若干入っていた。それでは隣で楽しい会話が展開しているのを横目にさっそく食べてみるとしよう。カレーのルーはトロミが強い。しかもほどよい具合に辛味が効いているので食欲がたちまち刺激される。辛さの程度としては中辛を少しだけ辛口寄りにシフトさせたような感じが近いだろう。そこにさらにゴロリとした夏野菜が転がりこんでくる。そして柔らかくなった鶏肉も一緒に口に入る。これはまさしく夏の味にふさわしい味わいだ。

 「味は大丈夫ですか?」と食べている間に聞かれたのだがちょうどかぼちゃを口に流し込んだタイミングだったのでもごもご声での返事になってしまった。いずれにせよ、美味しいということが伝わっていればそれで充分だったし、伝わってはいたようだった。だが会話というのはそこで終わるものではないし、あっさり終わってしまうと物足りないと感じられなくもない。そしてまた聞かれた。「今朝の船で着かれたんですか?」なるほど、確かに7時半に船の警笛を遠耳ではあったが確かに耳にした。あれは竹芝を夜中の内に出発した大型客船に違いない。

しかし筆者はあくまで今日が出港日だった。それを聞くと店内の人全員がワオとでも言わんばかりの驚きを露わにしていた。実は筆者が食べている間は欠航になったから来る予定の客がこれなくなって暇だという話をしていたのだった。そしてそこに果たして出港できるのか分からない筆者がふらりと「朝メシ」を食べに来ているのである。しかも極めつけはその筆者がなんとこともあろうに雨男だったりするのだ(笑)。その雨男はまもなく「欠航したら延泊」宣言をしたわけだが返ってきた返事は「延泊通り越してさらに連泊するパターンを保証します(笑)」だった。本来なら満室だった日程なのでさらに島時間を味わうチャンスだったのかも知れない。既にネタバレは済んでいるが結局は実現していない。

 それはそうと、夏の味を堪能しながら筆者はいつしか人間観察にとどまらず会話の輪に加わるようになった。話の内容も島時間由来なのかどうかは知らないがなかなか平和な話題だ。中には「隅田川ってどこだっけ?」というNHKのチコちゃんに叱られる危険性?の高いものもあったほどだったがここにチコちゃんがいなかったことに少々安心したものだ(笑)。

 夏の味とほのぼのとした雰囲気に癒され、800円を払って店を後にした。それから4時間後、筆者は竹芝桟橋からJR浜松町駅まで歩かんとしていた。

 

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