序文

 新島2日目はどこで何が狂ったのか午前4時に起きて1日が始まります。この後暇つぶしの散歩で反対側の、それも断崖の下にある海岸を目指そうとしたものの何を血迷ったのかいつしか山の中腹にいるというおっちょこちょいぶりを発動します(笑)。その後は蚊の集中砲火を浴びながらも湯の浜露店温泉で汗を流した後は、新島村博物館で展示の見学よりも民俗誌を読み倒すことに倍近くの時間を割く筆者でした。こうして結局朝食をとらないまま昼を迎えることになり、気が付かぬうちに空腹が最高潮を迎えたところで遭遇したのはこの欲求に最も応えてくれそうなとんこつ角煮ラーメンでした。離島のくたびれたラーメン屋、旅情を刺激するものがありました。

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新島で見つけたラーメン屋

 やれやれ、海岸に行こうということで散歩に出たにも関わらずグーグルマップに導かれるがままにいけば、気が付けばみるみるうちに標高が上がっている(笑)。グーグルマップのいう通りだとしばらくまっすぐ行ったところを左折して道なき道を行けばたどり着くらしいのだがとんでもない、標高は上がっていく一方なのでそれではただの飛び込みだ。おかげさまでいいのか悪いのか分からない汗をかいたわけだが、それはあとで温泉で流してしまった。結局その後朝食をとらないまま新島村博物館に行くのだが、これもまた中心部から妙に遠い(笑)。しかも坂道がある。これは大変だ。

 坂道と格闘し、博物館では展示の見学以上に民俗誌の閲覧に時間を割いた筆者、さすがに早朝からいきなり登山まがいなことをしているので腹が悲鳴を上げている。時計を見るとすでに13時、多くの店が14時に一旦閉店してしまうのでもたもたしていると昼食までとれなくなりかねない。それにしても気になるところがあった。「どさん子」というラーメン屋だった。昨夜は地元の学生らで盛り上がってたような。

 店に入ってみれば如何にも昔ながらの食堂という雰囲気、平日の13時であるため人は殆どいない。しかも昼の部は14時に終わるのでギリギリのタイミングで入ったことになる。名前が「どさん子」だけあって扱っているのは北海道の味噌ラーメンが中心だったが、ラーメン屋離れしたメニューも目に留まる。丼ものもあるのだが中でも特に驚きだったのが牛丼定食である。前回の食物語ではメニューの半分は魚介という焼き鳥屋が登場したのだが、それにしても何か「〇〇屋離れ」したメニューのある店にしか今のところ巡り合っていない気がする(笑)。多分気のせいだろう。とりあえずとんこつ角煮ラーメンを頼んだ。

とんこつ角煮ラーメン

とんこつ角煮ラーメン
 とんこつとはあるが味噌ラーメンを扱っている店なのでやはり基本は味噌ベースのスープだ。背脂も浮かんでいる。コーンを付け足せばいよいよ北海道らしくなる。それにしてもわざわざ伊豆諸島に行ってまで食べるものだろうかという議論も起こりそうだがこれまでのところ新島でラーメンを食べれるところは極めて少ないというのも同時に確かだ。

どさん子新島
 食べ始める前にもう1枚写真を撮った。座っている席の目の前には「人波につかれたら」の新島の観光PRポスターがあった。そこにさらに過去の来島者のサインが加わる。しかもそれがまた多い(笑)。ポスターはもはや色紙になってしまったようだがそれはそれで島にいることを実感できるからいい。店内もジメジメした空気と扇風機の音、そしてどこからとなく聞こえるのんびりした雑談でこれまた島にいることを実感させる。ここも島時間が流れていることは疑いの余地もない。

 それはそうと、これ以上思考を巡らせていたところで腹ばかりか頭までパンクしてしまうのと、冷めてはいけないので早速食べることとしよう。筆者は普段は細麺推しなのだが味噌ラーメンについてはちぢれ麵の方がいい。角煮については本場ほどとは言わずともしっかりとろける食感がある。これはご飯が進むので200円追加してライスを頼んだ。半ライスという選択肢もあったがこれまでの経験上半ライスでは物足りないと踏んでいた。しかしここではそれが当てはまることはなく、お茶碗にこんもり盛られたライスが登場した。世間では大盛りと言われる盛り具合だったのでここで調子に乗って大盛を頼んでいたら腹のキャパオーバーは間違いなく保証されるだろう(笑)。

 ちぢれ麵をすすっている間にもう一人来店した。この時点で時計の針は13時半を指そうとしていた。店にいるのは店員除いて筆者ともう一人の合計2人だけだった。間もなくラストオーダーの時間になるのかと思えばまだそうでもなかったようだった。結局ラストオーダーの知らせが来たのは13時40分頃だった。

 それはそうと、筆者の箸はまだ止まらない。角煮を口にするごとにお椀の中のご飯が勢いよく減っていく。ラーメンに一緒に入っているねぎと一緒に食べるとなお相性抜群だ。それにしても写真にも写っていたのりだが、これもまた普段食べるものとは少々違う興味深い味わいだった。少々甘い。それとものりの吸っていた味噌ベースのスープが甘口だっただけなのだろうか。とは言ってものり自体も若干の甘さはあった。

 事実上大盛なライスはどうだろう?角煮を食べ終える頃にはお茶碗も空っぽになっていた。以前に「旅人の腹は時に底なし沼になるらしい」と述べたことがあるが昨日(食物語第3回)同様今回も腹はマリアナ海溝になっていたようだった。しかし油断するなかれ、まだ完食したわけではない。まだラーメンの入った丼ぶりにはちぢれ麵が半分は残っている。

 13時55分、閉店5分前に最後に残ったスープまで飲み干して完食した。その後はしばらく水をがぶ飲みしてお腹はさらに膨れた。腹八分を通りこして腹10分にまで達してしまったようだ。こうもあっさり容量が埋まってしまうとは正直旅しているときに暴食漢になる筆者としては少々驚きだった(笑)。

 それはさておき、会計といこう。とんこつ角煮ラーメンは単品メニューの中で唯一1000円台に乗っており、1350円前後だった。そこにライスを付け足して1550円前後になった。会計を出て既に「準備中」という札の出ている店を後にするとどうしようもないほどの眠気に襲われた。お腹も腹10分満杯なのであまり動き回ろうという気にはなれない。しかも天気も読みにくく、いつ通り雨に出くわすか分からないのでひとまず宿に戻ることにした。ここからくさや屋兼ゲストハウスまでは歩いて3分ととても近い。これでさらにアルコールをひっかけていたとすれば眠気はさらにどうしようもないほどのものになっていたことだろう。

 14時、宿に戻ってくると満腹故の眠気とさらに早朝の登山と化した散歩による筋肉痛が重なって無意識のうちに布団にヘッドスライディングしていた(笑)。いや、それほど豪快ではないのでダイブインと訂正しておこう。この後16時まではシエスタの時間ということで死んだように眠った。島時間とスペインのシエスタ習慣の相性もなかなかいいものではないか(笑)。