序文

 とある思い付きで離島に出かけることになった筆者、それも思いついたのは出発する僅か4日前のことです。目的地は伊豆諸島の新島、予習をしないまましかも宿泊予約もフェリーの予約もギリギリという冷や汗たっぷりの展開ではありましたが晴れて出発の日を迎えます。まず目指すは竹芝客船ターミナル、伊豆諸島への玄関口となる港です。JRで竹芝に最も近い浜松町で下車した頃にはすでに11時、昼食の時間が近づいてきたようです。やがて伊豆諸島への玄関口となる港で鼈甲鮨に出会うこととなるのでした。

・・・・・・・・・

竹芝桟橋

 11時15分、浜松町駅で冷房の効いた列車を降りた。つい先週まで7月とは思えない過ごしやすい涼しさ(とはいっても日照がなかったのはいいことではない)だったがここに来て心地悪いジメジメした暑さが着実に体力を奪っていく。ここから竹芝桟橋までは遠くはない、かかってもせいぜい7分から10分程度だ。本当はユリカモメの竹芝駅で降りるのが一番だがそのために数百円を追加で払う気にはならなかった。こうして筆者はS4階段を降りた。S4階段を降りれば後はまっすぐ進んで左に曲がるだけ、道順は至って単純だ。しかし単純とは言ってもこの7分間の間にいつしか汗びっしょりになっていた。これが日本の夏だ。

 それにしても運が良かったのかどうかは分からないがどういわけかオフィスビルの1階を通って裏口から客船ターミナルに入った。本来目印にすべきは下の写真にあるマストなのだが….
竹芝

 それはともあれ、裏口から入った筆者はまずは窓口を探すことにした。筆者はインターネットで予約していたので、予約こそしていたがまだ発券には至っていない。そのため、予約確認書を見せてその場で発券しておらう必要があるのだが、いざ窓口を見つけたときはそれは言葉が出なかった(笑)。時刻は11時28分、窓口は全てきれいにシャッターを下ろしているではないか。ターミナル内をさまよえどもシャッターを下ろしていない窓口は見当たらない。どうやら13時15分発のフェリーに乗るのに11時台に着くのは早すぎたのかも知れない。いや、窓口が開いていないのだから早すぎだ。

鼈甲鮨

 早く着いてしまったからには腹ごしらえにはちょうどいい。一旦街中に繰り出す手もあったことにはあったがあの心地悪いジメジメした暑さに晒されるのだけはなんとしても避けたかった。こうなるとターミナル内では選択肢が3つ残る。竹芝ショップというコンビニが1店舗、カフェ・レストランが2店舗、少し外にでればおっと、弁当ワゴン車が2台止まっているではないか。こうなると選択肢は5つあることになる。中でも特に筆者の目を引いたのが写真の「鼈甲鮨」だった。以前に島寿司というのを耳にしたことがあるがその「鼈甲鮨」もその類になる、いや、鼈甲鮨こそ正しい名称だ。店舗に「伊豆大島」とあるのでこれは伊豆大島式の鼈甲鮨というところだろう、鼈甲鮨自体は伊豆諸島の広範囲で食されているためだ。それにしても先ほどから「鼈甲鮨」を連呼しているがそれがなんなのかの説明をまだしていない。

鼈甲鮨セット

鼈甲鮨
 説明の前に店舗内の写真をもう一点、とても清潔な空間だ。洒落ているのはもちろんだが白と青の壁が既に島時間とやらを連想させる。白いロープもまた気になるが唯一分かるのはそれが仕切りのような役割をもっていることぐらいだ。そういえば筆者が一番最初の来店だった。ともあれ、先にレジで払って後は座ってお茶を飲みながら待つ。その待ち時間というのがなんと短いこと。

鼈甲鮨
 鼈甲鮨と野菜のポトフのセットで1000円、手をつけやすい価格だ。トマトの天ぷらもついてきた。天つゆではなく、伊豆大島産の塩でいただく。そういえば伊豆諸島は江戸期は塩で納税していたそうだ。

鼈甲鮨
 これが鼈甲鮨だ。テカリが尋常ではないので脂の乗りには期待してよさそうだ。そういえばどの魚を使ったのかを聞き忘れてしまった。恐らくムロアジだとは思うのだが自身がない。というのもこの鼈甲、使う魚はムロアジをはじめ、シイラ、トビウオ、挙句にサケ(伊豆諸島とは縁もゆかりもない魚ではあるが)と多岐にわたるためだ。

そもそも鼈甲鮨とは何かという話なのだがこれは厳密には鼈甲の寿司と言った方が説明しやすい。鼈甲というのは魚の刺身を唐辛子醤油に一定期間漬けてから食べるものである。伊豆諸島の温暖湿潤な環境では魚は保存しにくい、これを唐辛子醤油で解決したいわば「漬け刺身」である。「漬け刺身」と言えば南米の刺身にレモン汁をたっぷりつけて食べるセビーチェも近いが鼈甲は離島故の保存のしにくさを克服するための保存食の刺身でもあったのだ。保存食としての刺身、これは食べるのが楽しみな一品だ。

いざ口にしてみると鼈甲はたちまちとろけていった。寿司のご飯もごまが入っていて鼈甲の旨味をさらに引き立てる。それにしても意外だったのが唐辛子醤油に漬けているということで少々ピリ辛になることを予想していた筆者だったが、それは見事に裏切られた。辛さを感じないばかりかむしろほんのり甘さが漂うようなところだ。これを他の島で食べたら味は変わるのだろうか、例えばクサヤという干物も伊豆諸島では広範囲で食べられているが作り方は島ごとに違う。それは筆者の目的地である新島に着いてからのお楽しみだろう。

他の料理はどうだろう、まずはトマトの天ぷらから伊豆大島産の塩と試してみよう。ほんのり甘い、しかも塩がそれをさらに引き立てる。外はサクッと中はジューシーと言った具合だろうか。

野菜のポトフはどうだろう。お好みでカレー粉をスープに入れていただく。野菜は20種類前後入っているらしい、素人の筆者にはもはや分からない(笑)。このポトフ、シャキシャキ感を楽しむものからゴロっとしたもの、ホクホク?な食感のものまで全てを楽しめる。そして〆にポトフのあっさりしたスープを飲む。なんとHealthyなランチなのだろう。何より胃もたれがない。

こうして完食した筆者だったがこの後しばらく飲茶の時間を楽しんだ。飲茶とは言ってももちろん広東でいうところの「飲茶」ではなくてただ純粋にそこのお茶を飲んでのんびり過ごすのである。こんなことを言っていると無性に広東省に行きたくなってしまうではないか(笑)。新島版の鼈甲を食べる方が先だというのに….。

 

料理好きが集まる婚活イベントはこちら!