気がつけば30代も半ばになってしまった。この間産まれたと思っていた姪と甥は小学校に上がったし、職場の後輩は寿退社していった。今の時代は30代40代での結婚が当たり前だよと言われても、結婚を意識できる彼氏すらここ数年いないとなると、慰められるどころか追い詰められてしまう。幸いにも世間には同じ悩みを抱える同士がひしめき合っているのだが、私たちの人生にとっても日本の未来にとっても、幸せな状況であるはずがない。
どうしてこうなってしまったの?私の何がいけないんだろう?
ちょっと落ち着いて考えてみよう。

こじらせ女子とゆうレッテル

我々のような、婚活しなきゃと言いながら恋愛もろくに出来ず自分に自信の持てない女性を世間は「こじらせ女子」と呼ぶ。やかましいわ!と一蹴したいくらいに悔しいけれど、実際にそうなのでぐうの音も出ません。風邪をこじらせても数日で治るのに、私たちは一体いつになれば「こじれ」から脱却出来るんでしょうか?そもそも、自信が無いって何?自信満々な人間なんているものなの?自分の事は考えてもよく分からないので、職場の仲良しと女3人で話し合ってみた。
年齢は私を含めて34才、36才、40才。結婚願望は全員あるが、彼氏はいない。年齢的に焦るよね、と話が進む中で
「もう結婚はできない気がする。私、もう諦めてるんです」
とゆう発言まで飛び出した。
「出来ることなら結婚はしたいけど、今から好きな人が現れるか分からないし、こんな私を好きになってくれる人がいたら、その人がいい!」
「でも、誰でも良いわけじゃない!」
何とまぁ消極的かつ自分に都合の良い条件。追いかけてくれる人は大歓迎、ただしイケメンに限る、そういうことですね。ところがどっこい、イマドキの男性は、ちょっといい女が近くにいるからと言って追いかけては来ない……のではないか?
この同僚2名、見た目は麗しく仕事も出来て常識的と、どこにお嫁に出しても恥ずかしくなかろう優良物件なのである。そんなふたりが今現在追いかけられていないのであれば、ある日突然いい男が目の前に現れて口説いたりしない。だって、私たちは日々刻々と年老いていくのだから。
男性の心理は、カッコよくありたいとゆう意識が絶対的にあると思う。女性に告白してフラれたらカッコ悪いな、とゆう防衛本能がある限り、そこらにいい女がいたとしてもホイホイ追いかけるなんてプライドが許さない。余程確信を持って
「この子は俺のことが大好きなんだな」
と判断出来ない以上は、行動に移せないのだろう。
それを踏まえた上で、彼らがこちらへ来やすいように誘導してあげるくらいの余裕がなければ、こじらせ地獄から抜け出すことは不可能ということか……なんだかレベルの高い話になってきた。恋愛経験の少ない私にはミッション・インポッシブル。

傷が癒えたら、もう傷つきたくない

少ない恋愛経験の中で、眠れないほど人を好きになったことがある。
姿を見るだけで耳まで真っ赤になるのが自分でも分かり、心臓がばっくんばっくん鳴り出し、手の指先までジンジンと痺れてくる。一生ものの恋をしていると思った。こんなに人を好きになれるものかと自分でも驚いた。彼も満更ではないような素振りを見せていたこともあり、転職して会えなくなるとゆう時に意を決して彼の仕事中にこっそりと
「連絡先を教えてください」
と耳打ちした。レシートの裏に書かれたメールアドレスは宝物の暗号みたいで、嬉しくて嬉しくて舞い上がったっけ。その後しばらくメールのやりとりをしたけれど、私から2回告白して2回ともけっこうしっかり断られ、心がポッキリと折れた。好きな人の存在だけで毎日がキラキラしていたのに、どうやってこれから過ごせばいいの?途方にくれた。
どんなに頑張って想いを伝えても、受け入れてもらえない恋もあるんだ。片想いが叶って両想いになれるなんて奇跡は、私には起こらないのかもしれない。
それからは何をするにも力が入らなくて、乗りたい電車が来ている時でも走れなくて、間に合うように急ぐとか何かを頑張るということが一切出来なくなった。無気力とはどういうものか、身をもって解った。
もう二度と、あんな惨めな私でいたくない。彼をどうにか忘れたくて、答えが見つかる筈がないと知りながら、Googleで「好きだった人を忘れる方法」などを検索したり。出てくる記事は何の解決にもならないアドバイスをくれたけど、読まないよりマシで、ただただパソコンの前で時間を過ごした。
そんなに傷ついたのにやっぱり好きで、ここまでの恋をさせてくれたことに感謝したかったし、どうか彼が幸せで、よく眠れますようにと毎晩願っていた。20代のこと。
女性は、プライベートを仕事に持ち込みたくなくても、恋愛の浮き沈みが生活全般に影響してしまう生き物。一人暮らし独身で生計を立てている身としては、精神的ダメージによって仕事に支障が出ることは死活問題。幸せな恋愛をしたいけれど、恋愛の全てが楽しいことばかりではないなんて、とっくに知っています。好きな人を愛し、愛され、ずーっと仲良く幸せに暮らしたいものの、そこに至るまでの道のりがわからない。それが荊の道であったなら、立ち竦んでしまう。もう、これ以上傷つきたくないんです。失恋の数だけ綺麗になるなんて誰が言ったんだろう?失恋したらそれだけ臆病になって当たり前だというのに。

精神的な満足感

自分に自信がないというのは、どうも言葉が足りない。私たちがこじらせてしまった背景には辛い恋愛があり、「私なんて」と卑下してしまうくらい自分に期待出来なくなっているんだ。3人の会話は続きます。
「今は恋愛にドキドキ感は求めてない。安心感がほしい」
「私を大事にしてくれる人がいい。私もその人を一生懸命に大事にしたい。その人のためにご飯を作ったり、綺麗に掃除したり」
30代に入ってから、婚活アプリをいくつかやってみた。今の時代ならではの出会い方ですよ、真っ当な恋愛の仕方ですよと主張しているように感じるけど、悪い言い方をすれば出会い系サイトです。援助交際などに使われた黒いツールだった出会い系と違い、恋活・婚活アプリはマジメに恋愛するための純真なものだ!と、皆が自分に言い聞かせて登録してるんじゃないだろうか。それでも、
「私たち、SNSで出会いました!」
なんて、だいぶ言いたくない。素性の知れない人とウェブ上で知り合うのは怖いもの。それでも今はこんな出会い方もアリと自分を納得させて、やってみた。実生活でアクションを起こすよりバーチャルな方がライトだし、普段の行動半径では出会うはずのない人とも接点が持てるのは大きなメリット。顔写真を載せるのは抵抗があったけど、少しでもいい写真・魅力あるプロフィールでないと恋愛対象にしてもらえない気がして、研究熱心に取り組んだ。
何人かとマッチングしてメッセージのやりとりをしていた中で、実際に会ってみた男性といい雰囲気になり、何度か会ってから彼がご飯作ってよと自宅に呼んできた。まだ付き合おうとゆう話にはなってないけど、好きになれそうだったし、部屋を見るとその人のことがよく分かるからと思い、行くことに。予想通り、キスもしたし体も触られて。それ自体がイヤだったのではないけど、付き合おうとゆう話もしておらず、手すら繋いでもいなかったのに展開が速くて気持ちが付いていけない。体よりも先に心が結び付いていたいのに……自分の性欲だけ満足させないで、私の気持ちを大事にしてほしかった。自分が呼んだらのこのこ部屋に来る、触らせてくれる女の子が欲しいのかしら?そしてますます
「私ってその程度の存在にしか見てもらえないんだ……」
と自己評価が下がってしまうのです。性格が今一つなら「君の顔が好きだ」「君の髪が好きだ」、「肩」でも「指」でも「声」でもいい、私のどこが好きで一緒に居てくれるのか教えてもらえないと不安でしかない。好きな相手から肯定されて安心したいんです。恋愛も結婚も、お互いの人生を肯定することなんじゃないかな。

理想のタイプは?

恋愛トークの定番といえばこの質問。実際のところ、どんな人がいいの?と聞かれた時に、具体的に言えたら紹介してもらえる可能性も。紹介はイヤとか言ってる場合じゃない。私の場合、3つ挙げるとしたら

(1)煙草を吸わない人
(2)お互いに一人の時間を過ごせる人
(3)声のいい人

(1)は分かりやすいですね。煙草が嫌いなんです。もし付き合うことになった(夢のような話だ)人が吸っていたら?と聞かれることも多いですが、やめてもらうようお願いします。だって、臭いが無理だからキスできない!
(2)は、自分の趣味の時間を持っているとか、放っておいても信頼出来る人という意味です。目を離したら何処で何をしているか心配でたまらん、なんてのは、安心感を得たいこじらせ組には猛毒なんです。
(3)これこそ単なる好みの問題ですが、好きな顔があるのと同じで好きな声とゆうのがあるんです。「男性は視覚、女性は聴覚で恋に落ちる」とゆう言葉があるらしいし、実際に好きな声をしている男性を好きになってしまうこともあった。
更にもう1つ挙げるとしたら、
(4)顔
好みの顔があるんですって。私は顔が整っている人が絶対にいい!見た目って大事じゃないですか。リンカーンが言った「男は40才を過ぎたら自分の顔に責任を持て」は、40と言わずどの年齢にでも通ずると思いますし、外見に気をつかえるって、重要なスキルなんですよね。髪型を整えておくとか、髭を綺麗にしておくとか。女性だって、髪の毛ボサボサ、眉毛の整え方も知らない、スキンケアやメイクも出来ない30代がいたら、どんなに内面が良くても魅力的には見えません。人の内面は外見に出るはずです。
これ、心理テストの一種だってご存知ですか?3つ厳選しろと言われ答えた後に、強いていえばあともう1つを訊ねる。この4つ目こそが、本心を最も強く表す答えなんだとか。お近くのこじらせ女子に訊いてみてくださいませ。

女性としてのリミット

結婚したいかとのセットで、子どもは欲しいかとゆう質問もよくある。即答でYes!自分と好きな人とのハーフなんて最高すぎる!お互いが好きすぎてずっと二人きりがいいとか、子どもが好きではないとゆう理由以外、そりゃあ欲しいに決まってます。そこで脳裏をよぎる女性のタイムリミット。35才以上の妊娠・出産はリスクが高まる「高齢出産」とされるのだ。なんて不愉快な言葉。もうちょっとマイルドな言葉は無いのですか?
ちょうどそれくらいの年齢で、私は人生初の無排卵月経を体験する。加齢に伴う子宮の機能低下によるものと婦人科医から告げられた時のショックといったら、もう。男性だって、年齢と共に精子の質が落ちると言われているけど、妊娠させることが出来ればお役御免なんですもの、気楽なものよ。女性の妊娠・出産、更に育児に必要な体力・気力を逆算すると、やはり35才は大きな壁。20才や30才の誕生日に感じた衝撃など比べ物にならない喪失感に見舞われる日々です。
かつて、女性の婚期をクリスマスケーキに例えた時代がありました。24才はちやほやされるが25才は半額になり、26才を過ぎたら見向きもされない。その次に登場したのが御節料理説で、クリスマスを過ぎてもお正月がある、というもの。元日は12月から数えると32日目に当たるので、32~34才まで旬が延長されたわけですね。今ではセクハラだと訴えられるので、そんなことは誰も言わなくなりました。あれだけしつこかった、誰かいい人はいないのかとゆう実家からのお問い合わせも最近はめっきり減りました。それどころか、田舎の奥様方のミーティングで
「うちの息子は40過ぎたしもう無理だ。お嬢さんがいるところは、間違ってでもとにかく産んでくれたらそれでいいじゃない」
なんて吹き込まれたそうで、そうかそーゆーものかと感化された母は、結婚しなくてもとりあえず産んでみたら?と新しい概念を提案してくる始末。こっちで育ててあげるから、そっちで好きに仕事続ければいいよーとまで言われると見放された気分でより辛い。
辛いことばっかりだから、早く誰かを好きになって、腕の中にスッポリ入って温まりたい。待っているだけじゃ誰も見つけてくれないから、出来る努力は何でもしなきゃ。私たち3人と、世のこじらせ女子たちが報われる日が来ますように。