タイトルを見た読者の中には、ついにハック・フィンも安アパートを追い出され、一路上野公園を目指し旅立ったのか!?と心配された方もいるかもしれません。
でも、ご安心を(誰も心配してねーよ)。
そうではなく、用事で出かけついでに見た桜の素晴らしさに感動したので、急遽この番外編ともいうべき記事が決定したのであります。
はっきりいって、暇人が書く日記と何ら変わらない平凡を絵に描いたような話です。
だって、ただのオッサンがぷらぷら放浪しているだけですもん。
なので、みなさん!決して期待してはいけませんよ!

なお、クライアント様の許可なく書き殴るという暴挙ゆえ、この記事がお蔵入りにならないことを祈りつつ、ボチボチ出発進行!

~放浪スタート~

その日、謎の中年ハック・フィンは、所用により珍しく遠出する。
とはいえ、1時間半程度の道のりなのだが、座右の銘に「働いたら負け」を掲げる無気力中年には、少々億劫な行程であった。
しかも、その用事が午前中にあったため、普段仕事に行く時間と変わらぬハードスケジュールを余儀なくされる。
人生で最も楽しみにしている休みの日だというのに、「やれやれ」と朝からため息が漏れるハック・フィン。
そんな私に、心躍る素敵な1日が訪れるのだから、人生とは摩訶不思議なものだと実感するのであった。

朝から参りました

旅立ちの朝を迎え、身支度を整えたハック・フィン。
あとは、出発までに朝食をとるだけである。
あまり時間もないことだし、玉子がけご飯でも食べるかと炊飯ジャーを覗き込む。

はて…。
お粥を作った覚えはないのだが、米が水に浸っており炊けているようには見えないのだが。
現実逃避の旅を終え、昨晩セットした時と同じ状態であることを認識する。
つまり、スイッチを押し忘れていたということか…なるほどね、そうきますか。

玉子、割っちゃったじゃないの(涙)

5分ほど床に寝転び、悪たれるハック・フィン。
こんな時でも、約束の時は容赦なくやってくる。
仕方がないので重い腰を上げ、近所のコンビニで「まぐろたたき手巻き寿司」と「サンドイッチ」を買い駅へと向かう。
気のせいか、当初の予定より朝食がグレードアップしたような。
「怪我の功名ですなー」と機嫌も直り、足取りが軽くなる。
ただ、玉子だけは諦めきれず玉子サンドを購入したのは、ここだけの内緒ですよ。

いざ目的地へ

駅に着き、自動改札機に財布に入ったスイカを当てるも全く反応せず、無賃乗車の現行犯にしか見えないハック・フィン。
財布からスイカを取り出し直接かざすと、今度は無事通過を果たす。
私は驚愕の事実に気づいてしまう。今日は、全くついていないのだと!
しかも、家と違い、駅の改札口では悪たれて寝転ぶこともできやしない。

ガラガラの車両に乗り込み、ホッと一息つこうと持参したグリーンダカラを口にする。
むむ…冷凍庫で一晩寝かした自称健康飲料は、鋼鉄のような強度を誇ったまま一滴も垂れてこないではないか(涙)
怒りにまかせ、カチカチに凍ったダカラに空手チョップをお見舞いし、逆に軽いダメージを受けながら次なるターゲットに手を伸ばす。
自分で煮出して、ペットボトルに詰め込んだウーロン茶である。
こんなこともあろうかと、冷凍庫という名の網走刑務所送りにはせず、セオリー通り冷蔵室で冷やしていた甲斐もあり程よい冷たさに仕上がっている。
さすがというべき、リスクマネジメントの帝王ぶりである。
ようやく、運気が上昇してきたようだ。

周りに人が居ないことをこれ幸いと、コンビニで調達した手巻きまぐろ寿司を食べるとしよう。
「正解!」心の中で快哉をあげるハック・フィン。
青空に浮かぶ真っ白い雲を見ながら食べる手巻き寿司の美味しいことといったら!
朝飯を食いっぱぐれ、グリーンダカラに袖にされた産みの苦しみがあればこそ、ここまで美味しく感じるに違いない。
手巻き寿司とアイスウーロン茶という組み合わせも、なかなか乙なものだ。
まぐろと酢飯の前では、グリーンダカラなどお呼びでないことは確かである。

目的地に着き、ものの30分ちょっとで用事が終わってしまう。
しかし、ここでも“リスクマネジメントの帝王”ハック・フィンは、きっちり本日の傾向と対策をリサーチ済みなのだ。

予定変更

予定よりも早く用事が済んでしまい、微妙な時間帯となってしまう。
これから映画とお花見に行く行程を組んでいたのだが、映画の時間まで2時間半もある。
予定ではもう少し用事に時間がかかり、ゆっくりお昼を食べてダラダラしているうちに映画の時間になるはずだったのだが…。
なので、ここは思い切って、先に花見に行くことを決断する。
そうと決まれば、駅に戻り電車でGOである。
電車に揺られて15分、流山市の運河駅にハック・フィンが降臨した。

いざ花見へ

この駅の近くには、知る人ぞ知る桜の名所「運河水辺公園」があるという。
しかも、徒歩5分程度なので、ハック・フィンのカラータイマーが鳴り響く前に到着できそうだ。
ガラケーで場所を調べるも、方向感覚ゼロの私に自力で行けというのは無理というものであろう。
早速、駅の改札口で駅員さんに尋ねる。
一見、藤岡弘にスモールライトを照射し小型化させたような風貌であるが、人懐っこい笑顔を浮かべながら親切に教えてくれる。
この駅員さんのおかげで、幸先の良いお花見のスタートを切ることができた。
「ありがとう。リトル藤岡」

リトル藤岡の教えに忠実に従い、歩を進める。
おー!仰せのとおり、少し歩くと土手沿いに咲き誇った桜が見えるではないか!
土手の道沿いを歩くと、春の暖かい陽光が気持ち良い。
何という、絶好の花見日和であろうか。
しかも、ちょうど散り始めのタイミングだったようで、頬を撫でる心地良いそよ風が吹くたびに優雅に舞う桜の花びら。
たしかに、勢いよく舞い散る花吹雪も幻想的な世界を演出し魅力的であろう。
しかし、今日のように優しい風に吹かれ、たおやかに揺らめきながら、儚げに散りゆく桜も何ともいえぬ趣がある。

そして、駅名の由来となった利根運河の畔で憩いのひと時を過ごす人々がまた、のどかな春の昼下がりを感じさせる。
母親に連れられた幼子たちが、川沿いで目を輝かせながら楽しそうに遊ぶ姿。
対照的に、お年寄りがひとり静かに流れゆく水面を見つめる佇まい。
一方で、出店のたこ焼きに舌鼓を打つ流浪のグルメ家ハック・フィン(この男の存在が、唯一景観を損ねている)。
実は、このたこ焼きは「ちょっとだけ」という殺し文句で販売していたのである。
加藤茶の一発ギャグ「ちょっとだけよ~」からヒントを得たとしか思えない魔法のフレーズに、まんまんと引っかかる放浪中年。
レギュラーサイズは10個入りで600円だが、「ちょっとだけ」は5個入りで300円なのだ。
しかも、「ちょっとだけ」は買うまで何個入りだか分からない。
かくいう私も、お兄さんが容器に幾つ入れるのか、ドキドキしながら見守っていた。
何の変哲もないたこ焼きであるが、この素晴らしい雰囲気の中で食べることにより、これまで味わったどのたこ焼きよりも美味しく感じるから不思議だ。
ちなみに、凍り付いたダカラも陽気に誘われ湧水のように溶けだし、私の渇いた喉を潤したことも付け加えておく。

そして、この運河の魅力は、桜とたこ焼きだけにとどまらない。
土手の一角には、菜の花が一足早く花を咲かせている。
桜の季節に菜の花の鮮やかな黄色を見ることができる僥倖。

善き人々と美しい自然が織り成す、ゆっくりと穏やかに流れるやすらぎの時間。
きっと、真の幸福とは、こういうことを言うのだと感じ入るハック・フィンであった。

映画、そして締めの一品

えてして、幸せな時間はあっという間に過ぎ去っていく。
映画の時間が、差し迫っているのである。
1時間半ほど散策したのだが、正直あと1時間は滞在したい思いが募り、何とも名残惜しい。

しかし、断腸の思いで電車に乗り込み、元の駅に戻って行く。
そこで、ふと気づく…運河水辺公園を目指して来たことを。
結局、その公園が、どこにあったか分からずじまいなのだ。
来年までの宿題ということで、クロレッツで気分転換を図りリフレッシュする。

そして、とっておきのサンドイッチをぱくつきながら映画館へ。
実はこの映画館、こちらに用事がある時は頻繁にお邪魔している。
地味なシネコンであるが、良質な映画を低価格で配給する有難い存在なのである。
「バジュランギおじさんと、小さな迷子」というロードムービー風の映画を観たのだが、実に素晴らしかった。
利根運河での幸福な時間に勝るとも劣らぬ、至福の時間に身を委ねることができたハック・フィン。
そのうち、作品レビューを投稿する予定なので、興味のある方は是非ご覧いただきたい。

映画を鑑賞し終わり、ついにお待ちかねの締めの一品である。
それは、ただの駅そばである。
しかーし!諸君、侮ってはいけませんぞ!
ここのそばは、価格こそ立ち食いそば屋と変わらぬも、麺の美味しさが段違いなのである。
駅そば特有のブヨブヨした感じではなく、しっかりとしたコシのある麺は、東京の三越や高島屋のレストラン街で店を構えても通用するのではないかと思わせる。
そして、流浪のグルメ家ハック・フィンは、必ずかき揚げそばを食べるのである。
店内で揚げるかき揚げは、さすがに作り立てではないものの、他の駅そばでは体験できないカラッとした歯ごたえと食感を堪能できるのだ。
大満足の1日の締めは、この隠れた名店のかき揚げそばしかあるまい。
つゆまで一滴残らず飲み干すハック・フィンであった。

P.S 420円のかき揚げそばを買うため、券売機に1,020円を入れボタンを押す。
すると、ジャラジャラと10円玉を筆頭に小銭の大軍が押し寄せる。
何事かと思うも、よく見ると10円値上がりしているではないか!
590円の小銭片手に、やっぱり今日は厄日だったと涙目になるハック・フィンなのであった…。