日本から生まれた食文化
自国でもあります日本という国には、数多くの伝統・伝承文化が受け継がれ続けています。例えば衣類でしたら着物、住宅関連であれば襖や畳、だんじり祭りや阿波踊りなどの催しも日本発祥のものとして有名です。そんな日本発祥の伝統文化の中でも、生活する上で欠かせない食文化について取り上げていこうと思います。
皆様は日本独自の食べ物と言えば何を思い浮かべますか?諸説はあるものの、日本発祥と思っていた食べ物が実は他国発祥ということも多々ありますし、逆に他国発祥だと思っていた食べ物が日本発祥の食べ物である場合もございます。この記事では、古来より現在も欠かせない日本発祥の食べ物を調べた上でご紹介します。
日本独自の伝統的な料理
さて、それでは日本発祥の食べ物について幾つか書き添えていきますが、その前に記しておきたいことがあります。ここでは、素材や食材についての根源を書き記す訳ではなく、日本独自の伝統的な料理の発祥とするものが主体となります。それから諸説があり、日本発祥と確定されていないものがある場合も御容赦下さい。
いかにも日本発祥の料理あるいは食べ物として、有名なものと言えば何を連想するでしょうか?おそらく、お寿司・天ぷら・ラーメンなどの意見が多いと思われますが、その中で日本発祥のものは実際にはお寿司だけだったりします。起源や発祥元を掘り起こしてみますと、意外なことも多い食文化ですが早速見ていきましょう。
日本発祥の伝統料理その一【お味噌汁】
ご存知の通り、現代の日本の食卓でも必ず食事の時に並ぶという家は多いとされる一品です。味噌汁という名称で初めて食卓に現れたのは室町時代の中期頃と云われています。他の食べ物と比べても、大量に作れて、体調不良の要因になる基を防ぎ栄養価も高いので、戦国時代には陣中食として重宝されました。
江戸時代には一般家庭の食卓にも味噌汁が並び始めました。当時の庶民にとって、米・味噌汁・漬物の三点は食事の基本スタイルになっていたそうです。味噌汁の味噌は豆を塩漬けした保存食でもあり、時代によっては不可欠でした。現代も外食で定食などを注文すると必ず味噌汁が付いてくるほど欠かせない伝統料理です。
日本発祥の伝統料理その二【茶碗蒸し】
茶碗蒸しの発祥は長崎県と云われております。由緒正しい料理書によりますと大坂で1790年に発祥ともあります。ですが、それは茶碗蒸しの中に穴子・かしわ・しいたけ等の具が入ったものを示していると思うのです。やはり元祖のシンプルな茶碗蒸しの発祥元は長崎県であると筆者は見ています。
日本発祥の伝統料理その三【おでん】
おでんとは豆腐料理である田楽(でんがく)の別称と云われています。元々は女房言葉の「お」をつけて呼ぶ習慣から「お田楽」と称されていました。それが現在のおでんという呼び名に転訛したとされています。発祥は江戸時代の江戸で、味噌田楽が大衆に親しまれており、直方体の豆腐を串刺し味噌をつけて食べていました。
ちなみに関西方面では、おでんのことを関東炊き(かんとうだき)と呼ぶ人も存在しています。鰹節と昆布で出汁に味付けして、厚揚・茹で卵・竹輪・蒟蒻・大根・芋・薩摩揚・牛筋・つみれ・がんもどき・糸蒟蒻など様々な具を入れて煮込みます。長く煮込むほど味が浸み込んで美味しくなるという日本発祥の伝統料理です。
日本発祥の伝統料理その四【鍋料理】
これぞ日本発祥の名料理の代表格と言えば、やはり鍋料理を差し置く訳にはいきません。その鍋料理の歴史を探りますと何と弥生時代にまで遡ります。その当時は大きな貝殻を今の鍋代わりにして具材を入れて火を熾し料理していたそうです。その後、鉄鍋が庶民全体にも普及した平安時代頃から囲炉裏も普及し始めました。
鍋を囲んで食べる形式は、江戸時代から現在に至るまで殆ど変化が無いようです。その江戸時代には、湯豆腐鍋や田楽鍋などの専門店が登場するほどの定番料理となりました。その鍋料理の中でも世界的に波及するほど大人気となったのが「すき焼き」です。この鍋料理は日本の食文化を更に発展させる役割を果たしました。
日本発祥の伝統料理その五【お茶漬け】
元々お茶漬けは湯漬けという形で日本古来より食されていました。その湯漬けとは米飯にお湯をかけて漬物などと一緒に食べる料理です。湯漬けの歴史は古く、源氏物語や枕草子などの作中に現れていることから平安時代には存在していたと思われます。お茶漬けとなり具を乗せて食するようになったのは江戸時代からです。
お茶漬けが庶民全体に定着したのは江戸時代中期頃と云われています。当時は番茶や煎茶が普及していたこともあり、現在の原型となるお茶漬けが誕生したと考えられております。ちなみにお茶漬けは戦国時代でも、身分の低い高いに関係なく平等に食していました。お茶漬けは日本発祥の伝統食として現在も人気は健在です。
日本発祥の伝統料理その六【刺身】
日本発祥の食文化において、代表的な料理の筆頭格と言ってもいい食べ物の一つが刺身です。おそらく日本人であれば嫌いな人は滅多に居ないと思われます。炊立てご飯の上に刺身を乗せて食べると幸せを感じます。元来は鎌倉時代に漁師たちの即席料理として、新鮮な生魚を山葵酢や生姜酢に付けて食したのが始まりです。
室町時代に入ってから醤油の普及に伴い、現代の人と同じ様に山葵醤油を付けて刺身を食べるようになりました。その頃の醤油は高級品でしたので、刺身は身分の高い人たちしか食べられない料理でした。刺身を一般庶民が口にするようになったのは江戸時代に入ってからです。
日本発祥の伝統料理その七【蕎麦】
日本発祥の麺類として誇れる、伝統的な食べ物の一つに蕎麦(そば)は必ず挙げられると思います。蕎麦の歴史は古く、蕎麦の原料であるタデ科のソバ植物は弥生時代には栽培されていました。蕎麦切りという麺類になるまで古来の蕎麦は、脱穀した蕎麦の実で雑炊にしたり粟や稗の雑穀類を混ぜたりして食べていたそうです。
うどんの技術に基づき、蕎麦切りが江戸時代に長野県で発祥してから江戸へと伝わりました。その頃、脚気という栄養不足による身体障害が流行していましたが、蕎麦を食べると脚気にならないと噂が流れて庶民より人気を集めました。現在も大晦日に、年越しうどんではなく蕎麦を食べるのはその頃からの名残でしょうか?
まとめ
今回は、日本発祥の料理の数々を記述させて頂きました。近頃たまにネット上で、日本の食文化だけではなく祭事・工芸・技術・諸芸能・建築などの日本文化は韓国や中国が発祥であるという書き込みを見かけます。そこで、そんなはずはないという思いから、日本の伝統文化における各資料や歴史文書を独自調査しました。
その日本発祥の食文化を調べた結果に基づき、まとめた中から幾つかをご紹介させてもらいました。伝統的な日本料理という食文化に至るまでの食材や原料などは、他国のものであることもあります。ですが、美味しく食べられるように調理して最初に完成させた料理が日本であれば、日本発祥の料理に他ならないと存じます。