私が、手塚治虫作品に出会ったのは、中学1年生の頃でした。私の通っていた中学校の図書館には手塚治虫先生の漫画の数多くが自由に読めるようになっていたので、昼休みや放課後に、私は夢中になって読み漁りました。「ジャングル大帝」、「リボンの騎士」、「どろろ」、たくさん読んだなかでも私が特に夢中になったのは手塚治虫先生不朽の名作「ブラックジャック」でした。『医療と生命』をテーマに、天才外科医ブラックジャック(以下、BJ)が目の前の命と向き合っていく姿を描いたこの作品に、私は後に自分でコミックを買い集める程、心を奪われたのです。

「ブラックジャック」は、2003年の2時間SPを経て、2004〜2006年に手塚治虫先生の御子息・手塚眞氏を監督として日本テレビ系で連続アニメが放送、後に映画化もされ話題になりました。しかし、それ以前の1993〜2011年、アニメーション監督・出崎統氏の手によってOVA化(全12話)がなされているのをご存知でしょうか。
今回は、そのOVAのなかから、珠玉の3作品をご紹介したいと思います。どうぞ、最後までお付き合いください。

カルテⅤ:「サンメリーダの梟」(原作:過ぎさりし一瞬)

偶然列車に乗り合わせたBJとピノコ、そして英国軍人のレスリー。その夜、BJは発作を起こしたレスリーを介抱するのだが、彼の病状に目を疑う。銃声も聞こえなかったのに、背中の銃創から大量出血をしているレスリー。しかもその銃創はしばらくすると、自然に塞がっていったのだ。目を覚ましたレスリーは、自分が毎日悪夢や底知れない不安、そして謎の発作に怯えていることを告白。その夢の中で見知らぬ女性や少女と会っているのだという。
そして、二人と共に浴びせられる銃弾。そんななか、レスリーの身体を診たBJは、レスリーが赤ん坊の頃、命に関わるような大手術を受けていることを指摘。それは、レスリー本人も気がつかない程の芸術にも匹敵する神がかった技術の賜物だった。「是非、その医師に会ってみたい」というBJだったが、レスリー自身に手術時の記憶はもちろんなく、両親共に他界しているため、事実を確認するのは不可能かと思われた。しかし、目の前にいる医師がかの有名なBJだと知ったレスリーは、自分の病気を治してくれとBJに依頼。BJは、昔レスリーを手術した医師の捜索に協力することを条件に依頼をひき受ける。
そして、レスリーの夢に出てくる女性がうたっていた歌の歌詞に出てくる「サンメリーダ」という言葉を頼りに、エルガニア共和国サンメリーダ村に向かう。サンメリーダ村は、長期に渡った内戦の影響で未だに復興のめども立っていないひどい様子だった。しかし、そんな様子を見て、村の事、情景を鮮明に思い出したレスリー。そして、朽ち果てた家の中で、夢の中の親子の写真を見つけたレスリーは、教会の前で銃撃されたという記憶を取り戻し、泣き崩れる。しかし、赤ん坊だった自分がそんなことまで覚えているはずがないと疑問を感じるレスリー。そんな彼に、教会の牧師は墓守のエルネストを紹介する。
その晩、エルネストの口からレスリーの夢に出てくる親子とレスリーに関する衝撃の事実が語られる。医師を志し、外国で医学を学んでいたエルネストだったが、母国の内戦を知り、志半ばで帰国。村で、怪我人の処置にあたる毎日に明け暮れる日々を送っていた。そんなある日、レスリーの夢の中に出てくる親子がエルネストの元に運び込まれてきた。娘の方はすでに息がなかったが、母親のサンドラはまだ息があったが手がつけられる状態ではなかった。そこに、どこの家の子かも分からない重症の赤ん坊が運び込まれてくる。エルネストはせめて、彼女と共に逝かせてやろうと赤ん坊をサンドラの傍らにそっと寝かせた。
仲間に呼ばれたエルネストが、次に患者の姿をみると、なんとサンドラは赤ん坊を胸に抱き、赤ん坊は必死に彼女の乳を吸っていたのだ。サンドラのためにも、この赤ん坊だけは助けると決意したエルネスト。足りない部分は、サンドラからもらい、そして、サンドラの生きた証として、赤ん坊の背中に彼女の銃創の跡の残る皮膚をそのまま移植。
その後、赤ん坊は、イギリス人ジャーナリストに引き取られていったという。その赤ん坊こそ、幼い日のレスリーだったのだ。レスリーが見ていた夢は、移植者であるサンドラの記憶だったのだ。そしてエルネストこそ、内戦終結までの27年間、一歩も地下診療室から出ず怪我人の治療を続けた英雄「サンメリーダの梟」だった。

感想

サンドラの母性と、エルネストがレスリーの手術をしている中ずっと聞こえていたという「エルネスト、あなたならできる」という声。そして、サンドラの起こした奇跡が今も続いていたという事実にとても感動しました。そして、レスリーが泣き崩れた時、ピノコの「だめ、レスリー。ピノコ泣くのきらい」という言葉に思わず胸がきゅんとしました。

カルテX:「しずむ女」(原作:しずむ女)

豊かな漁場として知られる三日月湾。満月川に誘致された工場から、人体に有毒な廃液が湾へと流れこみ、汚染。それを知らずに、汚染された魚を食べ続けた住民たちは、蔓延する公害病「三日月病」に悩まされていた。三日月市を訪れたBJは、そこで人魚の生まれ変わりと噂される不思議な魚売りの少女、月子に出会うが、月子もまた「三日月病」を患い、足を悪くしていた。
月子の足の手術を請け負うBJだったが、戸籍を持たない月子には市からの救済措置がとれないことが判明する。月子のため、奔走するBJ。しかし、月子は「あおしんじゅとってくる」という置き手紙を残し、BJの前から姿を消してしまう。青真珠とは、三日月市に伝わる人魚伝説の中に出てくる女性から男性へ対する愛の贈り物だった。

月子は5日後、海で遺体となって発見される。しかし、月子の病理解剖をしたところ、月子の体内からまるで青真珠のような腫瘍が発見される。初め「海へ還してやってくれ」というBJだったが、「三日月病」解明の手掛かりになるかもしれないと、持ち帰ることにする。
その目には、光るものがあった。

カルテXI「おとずれた思い出」(原作:奇形嚢腫、おとずれた思い出)

ある雨の夜、ピノコが発作を起こして倒れてしまう。ピノコの身体に異常はなく、数日で退院したピノコだったが、その後も同じ発作を繰り返していた。そんな時、高尾と名乗る青年がBJの元を尋ねてくる。ピノコの治療に専念したいBJは高尾の依頼を断ろうとするが、高尾が、かつて奇形嚢腫を患っていて自分の元を訪れたピノコの双子の姉・西園寺ゆりえの使いだと知り、依頼を引き受ける。
ゆりえは、何度手術しても次々に現れる腫瘍で、命が危ない状況であった。しかし、西園寺流家元のゆりえは、命を助けてくれとは言わず、二ヵ月後の冬の式年祭で白鷺天翔の舞が踊れるようにしてほしいという。驚くことにゆりえが発作を起こすと、それに共鳴するかのようにピノコも同じ発作を起こすことが判明。BJは、ゆりえとピノコを助けるため、西園寺家の歴史を紐解いていく。そして、BJが辿り着いた答えは、代々西園寺家に産まれた双子は5年ともたず、片方が死んでしまうと忌まわしい歴史だった。

感想

奇形嚢腫として姉・ゆりえの身体の中で18年を過ごし、BJの手によって、一人の人間としてこの世に生をうけたピノコ。ゆりえの幼い頃の記憶でお腹の中のピノコと会話しているシーンがあります。ゆりえも、ピノコを心の底から忌み嫌っていたわけではなかったのかなとちょっと考えてしまいまいした。ラストシーンで、ピノコが「ばいばい、お姉ちゃん」というシーンがあって、ちょっとジーンとしました。

出崎版「ブラックジャック」は、絵が劇画調でオリジナルストーリーも含まれていますが、手塚治虫先生の作品で表現されている「生命の尊さ」をとても大切にしている作品です。みなさん機会があったら是非、鑑賞してみてくださいね。
最後まで、読んでいただきありがとうございました。

 

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