前回は、羅川真里茂さんの『ニューヨーク・ニューヨーク』の第1巻より押さえておきたい台詞をご紹介しましたが、今回は、前回紹介しきれなかった第2巻をご紹介していきたいと思います。どうぞ、最後までお付き合い頂けたら幸いです。

『ニューヨーク・ニューヨーク 第2巻』(白泉社文庫)より

「ケイン・・・俺には何もなかったんだ。けど、今は君がいる。先の事なんて分からない。あの時、思いもしなかった。君という人がこの先に待っているなんて。死ななくて良かった。本当に、心から、そう思うよ。」(メル)

ゲイチャーチで、ケインの上司・ブライアン夫妻に見守られ結婚式をあげた、ケインとメル。今まで辛い人生を歩んできたメルが、ケインとの結婚初夜に心の底から幸せだと思っていたことが伝わってくる一言です。

「ケイン・・・死なないでくれよ」(ブライアン)

一緒にしてはいけないと思いつつも、ケインの仕事上の元パートナーで、麻薬売買組織と内通し、警察官によって銃殺されたダニエル(実は彼もゲイで、ケインのことを愛していた)、エイズで亡くなったゴーシュ、ブライアンはホモセクシャルと知る部下を二人も失っていました。その経験から、ブライアンはケインのことは失いたくないと思っていたようです。

「すごく・・・今、幸せだよ・・・それを・・・伝えたくて・・・」(メル)

メルが仕事中のケインに電話をかけて伝えた言葉。ずっと、ドキドキしていて、何をやっていても落ち着かないというメル。俺もそうだよ、とケインも幸せを感じます。しかし、この電話を最後にメルはケインの前から姿を消します。

「母さん俺だって不安なんだ。今はそれを冷静さに変えたんだ。そうじゃないと。俺の心が保てない」(ケイン)

メルがいなくなって16日目。記憶喪失で入院している男性がいると警察から連絡が入ります。心配で駆けつけていた母・エイダに対して、あまり期待はしないでほしい、というケイン。不安を希望に変えるのは大切だわ、というエイダの言葉をケインは余裕の無さから受け入れることができません。

「弱いから泣くんじゃないのよ!!人間だから泣くのよ!!」

メルのいない不安から発作的な胸の苦しさを覚えるケイン。ある晩、突然倒れたケインをなだめながら、ケインはメルが失踪してから一回も泣いていないことを指摘。息子と正面からぶつかり、ケインの本心を引き出します。息子のことを想うエイダの強い一面を感じるワンシーンです。

「ハート アンド ソウルね。あなたの言葉を聞いてると情熱ではなく、別のイメージがわくわ。 ええ・・・きっとメルがそれを与えたのね。それは、とても静かで穏やかな・・・凪の様だわ」(ルナ)

凶悪事件に巻き込まれたと思われるメルのことを共に捜査することになった、FBI捜査官のルナ・ピッツバーグ。彼女は、ケインたちの性的嗜好に偏見はない。感情があからさまなケインがメルの前ではもっとガキになると聞き、少し呆れている節も。

「でも・・・俺は生きたい・・・生きてケインに会いたい・・・」(メル)

凶悪犯、ジョーイ・クラインに監禁されていたメル。自分とは別に監禁されていた人たちが次々に殺されていく中、何もできなかった自分を責めつつも、生きてケインに会うことを希望に耐え続けるメル。そんな彼の想いを踏みにじるように、新たな被害者が出てしまう。

「お前は・・・エリックじゃない・・・エリックになれない・・・エリックはこんな事しないんだ・・・」(ジョーイ)

愛人の子の自分に1人優しかった末の弟・エリックにメルを重ねていたジョーイ。メルに対し、・・・頭を撫でてくれるか・・・?と要求。言われた通り、ジョーイの頭を撫でたメルでしたが、そこでジョーイは、メルは自分が愛したエリックではないと改めて感じます。

「・・・君はエリックを色んな人に見立てるけど・・・俺は・・・ケインを他の人に求める事は出来ない・・・誰も、彼の代わりになんてなれない・・・!!」(メル)

監禁場所の山小屋に火を放ち、メルを連れて逃亡をはかるジョーイにメルが放った言葉。ジョーイに犯されている間も、口から漏らすのはケインの名ばかりだというメルには、どんな精神状態であろうとケインの代わりなど考えられないのでしょう。

「おいでメル、さあ・・・」(ケイン)

崖から落ちそうになるケインを必死で助けようとする負傷したメル。手を放せというケインに対し、絶対放さないというメル。メルの決意を察したケインは、メルと共に激流に身を投じるのだった。

「ジョーイは時々、スイッチが切れたみたいに癇癪を起す。僕はどうしたらいいのか分からなくなって泣いてしまう。すごく不安で怖いんだ。ルナ姉さん助けて。僕を助けて。ジョーイを助けて。お願いだよ、ルナ姉さん・・・」(エリック)

今は亡き、エリックが毎晩夢の中で語り掛けるという。ルナは、ジョーイの姉だった。虐待される自分を見て見ぬふりをして、自分を弟じゃないとまで言ったことをジョーイに問い詰められたルナは、子どもの頃の自分は弱かった、あなたのことは昔から弟として思っていたわ、と告白した末、だからこそあなたのことを止めにきたと言い、ジョーイ 愛していたわ、とジョーイに銃口をむける。その時の一瞬、驚いたようなジョーイの表情が印象的です。
そして、失踪から31日目。メルは無事保護されます。

「思考の倒錯者共は脳の一片でしか物を考えられないらしい。そんな噂はくそっくらえだ!!」(ケイン)

メルの様子を報道しようと、連日、家の前に群がるマスコミ関係者たち。ある記者から、一部の心ない人々の噂を聞いたケインが放った言葉。被害者であるメルは、さらなる苦しみにさらされ、ケインもまた事件が明るみになったことで、職場に居づらい状況になっていました。

「肉体的なものは精神的なものが紐解かれた時にやってくるんだと、幸せはそこから生まれるんだと・・・」(ブラウン)

メルのカウンセリングのドクター、Mr.ブラウンがケインにかけた言葉。ジョーイの事件以来、メルは精神的に不安定な生活を強いられ、ケインと肉体関係をもつことが出来ずにいました。

「もういいだろうと誰かが囁く。ニューヨークは憧れの地だった。」(ケイン)

ケインが帰宅すると、義父から電話があったと、メルは軽いパニックになっていた。一人でこの家にいると怖い・・・、というメルに対して、ニューヨークを出ようと提案。二人は、ニューヨークを後にし、ケインの実家に身を寄せることを決めるのでした。

「Mr.メル・ウォーカー、インタビューに答えて。あなたは、幸せですか?」(ルナ)「はい。」(メル)

同性カップルの結婚は、一般的には「養子縁組」をさします。メルは、ケインと養子縁組を結ぶことで「メル・フレデリックス」から、「メル・ウォーカー」に名前が変わります。ケインとメルは、本当の幸せを手に入れたのです。

「あまり問題を起こすと児童福祉局によって、私と彼らは引きはがされてしまう。それが一番怖かった」(エリカ)

ケイン31歳、メル28歳の時、養護施設から当時5歳のエリカを養子として受け入れます。ケインやメルのことを「ゲイ」と呼び、父親同士が愛し合っているということが他の家とは少し違っているということを知らなかったエリカ。彼女のなかでそれは、ごく普通のことでした(何が普通で、何が普通じゃないかといわれれば、何と答えればいいか分かりませんが・・・)。しかし、二人のことをからかわれ、学校で問題を起こしたエリカを迎えに来たケインとメルのことを心配するエリカ。そして、こんなかっこいい二人に囲まれて帰る自分は、お姫さまみたいでしょと少し誇らしげに学校を後にするエリカでした。

「あたしを見て、不幸に見える?可哀相?あたしは親に恵まれなかったわ。彼らは子供に恵まれなかったわ。片方しかいなかったら、こんな不公平な事ってない。でも、あたし達は求めあって一緒になれた。すごく公平だわ。神様が巡り合わせてくれたのよ」(エリカ)

13歳の時、校内新聞のインタビューをとろうと、エリカに近づいてきたマシューにエリカが言った言葉。このあと、片側からしか物を見られない目は記者向きじゃないわ、とばっさりエリカに切り捨てられます。後にエリカは、自分の皮肉の上手さはケイン譲りだとよく言われたものだ、と語ります。

「俺は、メルと過ごした時間と同じ位、メルがいない時間を過ごしたよ・・・」(ケイン)

メルを膵臓癌で亡くし(享年52歳)、それから長い時間を過ごしたケイン。彼の指には、あの日のまま、結婚指輪がはめられていました。そんな穏やかな昼下がり、ケインの元へ現れたメルの、もう大丈夫?という言葉に、ああ、と答えたケイン。とても、穏やかな眠りでした。

いかがだったでしょうか。私自身、「同性愛」についてどう思うかと問われたとしても、上手く表現することはできないのですが、例えるなら、必要もないのに癖や方言をわざわざ矯正しようと人はするでしょうか。個性ととらえる人が多いのではないでしょうか。解釈が間違っていたら、ごめんなさい。でも、これが私の精一杯の言葉です。少しでも、彼らの気持に寄り添えたらというのは、私にはあまりに勉強不足過ぎて逆に不謹慎かもしれません。しかし、この地球上で生きるひとりひとりが形は違ってもそれぞれの幸せを手にすることを願ってやみません。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。