衣装ケースは服を入れるものではなくカメを入れるものです。
どうもこんにちは、ハペ屋のgekcoです。
毎日を爬虫類や両生類に囲まれていると実に様々なトラブルに巻き込まれます(時として自ら引き起こします)が、今回ご紹介するのは「脱走」に次いでハペ屋らしいトラブル、「咬まれた!」編です。
フィールドでも飼育でも、ハペ屋はあらゆる生き物から咬まれるリスクを背負って生きています。

そう、リスクのない人生などつまらない。
危険のない人生など人生ではない。
ハペに咬まれないハペ屋などハペ屋ではない!(違います)

というわけで、今回はハペにまつわるトラブルの真骨頂、「咬まれた!」編です。とくとご覧あれ!

事件簿①…に行く前に

あ、待ってこれだけは書かせて。
ハペ屋というのはいろいろなシチュエーションでいろいろな奴に咬まれそうになりますが、少なくともハペ屋が咬まれたのなら、例外なく言えるのは「咬まれた奴が100%悪い!」という点です。
フィールドの場合。基本的に、爬虫類が自ら襲ってくることはまずありません。咬むのは自己防衛か、相手を食おうとするときだけです。咬まれるような距離に生き物がいることに気付かなかったのなら、それは油断。捕獲した個体を取り扱っていて咬まれたのなら、やはりこれも油断。
飼育の場合。最近飼い始めたという方に特に多いのですが、「うちの子は可愛いから咬まない」と本気で思っている人がいるようなのです。
否!!
犬ですら、嫌なことをされれば咬みますぞ。
ましてや、コミュニケーションの「コ」の字もない爬虫類を相手に、「うちの子は咬まない」などという根拠のない信頼を置いてはいけません。それは信頼ではなく、甘えです。
おとなしいとか可愛いとか、そういったものとは無関係に、咬まれる動作をすれば咬まれるのです。
…おっ、いいねいいね、説教臭い感じになってきたぞ!
ま、そんなわけで、こっから書き始める「咬まれた!」事件簿も、ワタクシの油断によるものです。「あぁ、こいつエラそうにコラムなんか書いてやがるけど、ヘマばっかりじゃねぇか」と笑ってやってくださいな。

今度こそ事件簿① 恐怖!カミツキガメとのデスマッチ

あれは、ワタクシが大学院で水生のカメの研究をしていたときのこと。
調査のためにカメを捕まえるのですが、素手で追いかけても効率が悪いので、罠をかけて捕まえます。この罠、本来はカニを捕まえるためのもので、中に餌を仕掛け、水中に沈めておくと、においにつられてカメがワラワラ入ってくると。入り口の構造に工夫がしてあって、入ったら出られない、と。一晩沈めておいて、翌朝エイヤっと引き上げると、運が良ければカメが入ってると。そういう仕掛けなんですな。
その日、ワタクシは仕掛けた罠を回収しに川へ行き、罠を固定していたロープをほどいて、罠を引き上げ…ようとしました。

あれ?上がらない。
枝にでも引っかかったかな?

枝に引っかかっていたとしてもどうすることもできないので、そのまま力ずくで引っ張り上げたところ、大量のクサガメが!
たしか、70匹くらい入ってたかな。
枝に引っかかったわけではなく、カメの重さで罠を持ち上げられなかったのです。
罠の中に、約70匹のクサガメの山。
なぜかみんな同じところに集まるので、カメの山ができていました。
うんざりしつつ、その山から一匹ずつ取り出し、大きさなどを測定します。
忘れもしない、ちょうど半分まで計ったとき。
だりーよー多いよーとぼやきながらカメの山に手を伸ばした瞬間!

スコンっ!!

なんて言えばいいかな、出刃包丁でまな板の上のバナナをストンと切ったような音?
そして同時に、カメ山に伸ばした手を見る。
カメとカメの間に隙間ができ、そこから殺気を帯びた視線が…。
ヤバイ!!
と思って手を引っ込めるより一瞬早く、奴の第二波攻撃。
耐突刺性手袋越しにもわかる衝撃。
やられた小指がジーンってなってる。
痛みをこらえつつ、罠ごとガサガサと振ってクサガメの山を崩すと、甲長40cmを超えたカミツキガメがこちらをにらんでいました。

カミツキガメは、かつてペット用に輸入され、現在は特定外来生物として飼育が禁じられている北米産のカメ。この時の個体は40cmくらいでしたが、50cmを超えることもあります。家で飼うには大きすぎるし、咬まれてけがをするリスクが高く、その辺に捨てちゃう人が多いんですな。だから規制されたんですが、規制の前からたくさん捨てられてきた結果、こういう「ごくありふれた川」にもカミツキガメが現れることになったわけです。
罠がやたらと重かったのも、クサガメがやけにうずたかく積みあがっていたのも、罠の最下層にこいつが潜んでいたからか。

深呼吸をした俺は、手袋を外す。素手のほうが感覚をつかみやすいから。
そして、タイミングを読みつつ罠を揺らし、カミツキガメの向きを変える。
少しでも手が射程に近づけば「スコンッ!」
しかし、攻撃の瞬間、わずかに奴は体重移動します。その瞬間に罠を揺らし、カメの向きを変えることに成功。よし、後ろを取った!
これはスッポンも同じですが、甲羅の前半分はすべて攻撃範囲です。そのため、後ろ足の付け根に指を入れ、甲羅の後ろの縁をつかむようにして持てば、安全に保定できます。つまり、こちらの勝ち。カメが向きを変える前に素早く後ろ足の付け根に指を差し込み、保定完了。
しかし、もし素手のまま咬まれていたら、今頃ワタクシの小指はカミツキガメの一撃で木っ端みじんになっていたかもしれませぬ…。

事件簿② ブルータス、おまえもか!アオダイショウの裏切り

あれは仕事で、50人ほどのお客様の前でヘビのガイドトークをしていたときのこと。
ヘビというのは不思議な生き物で、気持ち悪い、きらいといわれつつ、ヘビを前面に出したイベントを企画するとなぜかそこそこの人気があるんですな。
コワイモノ見たさ、というヤツか。
もちろん、ヘビのガイドトークなんかするなら、ヘビ見せたいじゃないですか。
そのため、飼育してたアオダイショウをスタンバイするわけです。
アオダイショウは日本固有のヘビで、1.8mくらいになる立派な美しいヘビです。
そして、ちゃんとハンドリングを繰り返して慣らしておけば、ほとんど咬むことはありません。元来、のんびりした大人しいヘビです。

「アオダイショウは大人しい」などという幻想には一切惑わされないワタクシ、イベントの1週間前から毎日アオダイショウをハンドリングし、コンディションを調整しました。もともとハンドリング慣れしていた個体なので、この調整で完璧に整ったはず。
見せてあげよう、日本のヘビを!
と(心の中で)言いつつ、ガイド中にアオダイショウを取り出す。
盛り上がるお客様。
いいね、順調。
そう、最初は順調だったんですよ。最初は。
それは、何の前触れもなく起こった。
片手にアオダイショウを持ちつつ、写真フリップを見せながらガイドトークをしていると、突然、鼻先をワタクシの腕に押し付け始めたのです。
おやおや、何のマネですか?
そう思っていた矢先。

カプッ!

当たり前のように口をあんぐりと開け、俺の腕に咬みつくアオダイショウ。
思いっきり歯が刺さっている。
勘違いされがちですが、上あごに大きな牙があるのは一部の毒蛇だけ。ほとんどのヘビは、細かく鋭い歯が無数に並ぶ口をしています。
この歯、刺さるだけでなく、切れます。
毎日あんなにハンドリングしてたじゃないか…。
あんなに大人しくしてたじゃないか…。
大丈夫って顔してたじゃないか…。

すぐに咬まれたことに気づいた俺、瞬時に判断を求められます。

そのままガイドトークを続けつつ、笑顔一杯でアオダイショウを引き剥がし、まくっていた袖を戻します。
袖口のボタンを閉めるふりをしつつ、ハンカチを手首に巻きつけて袖口で隠す。
ちなみに、すっげぇ痛いっす。
こういう場合、傷口がかなりサックリ切れているので、しばらくタラタラと血が流れちゃうのです。
案の定、腕を伝わる生暖かい液体の感触。手首に巻いたハンカチが血を吸い取り、なんとかお客様にばれずに済んだ…はず。
アオダイショウのガイドトーク中に腕を咬まれたのをごまかした怪しい人物に見覚えのある方、それ、ワタクシです。

事件簿③ 思わぬ伏兵!アカアシガメの恐怖

アカアシガメって、知ってます?
ハペ屋なら割とよく知っているはずのリクガメです。その名の通り足に赤い模様が入ってて、南米に生息するカメなんですな。ちょっと大きくなるけど、きれいで丈夫でいいカメです。
ワタクシ、このカメを友人から半年ほど預かっていた時期があります。
せっかく預かったんだし、快適に暮らしてもらおうと、殊勝なことを考えたわけですよ。
部屋の中に隠れ家やホットスポットを配置し、入られたら困るような隙間は片付けて、部屋で放し飼いにしてみたわけです。フローリングだったから掃除も簡単だし。
これがね、なかなかいいのですよ。
ときおり、カメがポコポコ歩く姿を視界に入れつつ生活するってのは、これやってみるとわかるけど非常に楽しいっす。
いやぁ、いいじゃないかアカアシガメ!

そんなある日。
昼間っから寝転んで、テレビ見て笑ってたんですよ、その日。
そこへ、おもむろに近づいてくるアカアシガメ。
あぁ、今日も平和だなぁ、相変わらずポコポコ歩いてるなぁ。よしよし可愛いやつめ。
でもよーく見ると、なんだかいつもより歩くのが早い気がする。
ポコポコっていうより、スタスタ?
一目散に、俺の足に近づく。
この時点でも、まだ余裕こいてる俺。
おぉおぉ、可愛いやつよ。
そう思いつつテレビに目を向けた、そのとき。

いってぇぇぇぇ!!!!

なんでしょうね、ラジオペンチで思いっきり肉をつままれた感じ?
見ると、アカアシガメが平和な顔をしながら俺の足の親指の肉を咬んでる。
むしろ、食いちぎろうとしてる。

離せこいつ!!焼いて食うぞ!!!

と言いつつなんとか逃れたものの、けっこう傷が深い。あれ?っていうかえぐれてる?
あ…アカアシガメが、くっちゃくっちゃしてる…。
その後調べてみると、どうやらリクガメは基本的に草食性で、足りない栄養は鉱物などで補っているが、他の動物の死体なんかも食べるようなのです。
そして、男性の足の裏の匂いってのは、どうやらカメにとっては死臭に近い匂いらしい。
つまりワタクシ、死体と見なされたわけですな。
このコラムを読んでいる足の臭いハペ屋の皆様、決して、決してアカアシガメを放し飼いにしてはなりませぬ…。
実はあれ以来、小~中型クラス(大型はなぜか平気)のリクガメが突然近づいてくるのが若干、怖い。これが、トラウマか…。

というわけで、ワタクシの「咬まれた!」エピソードをご紹介して参りました。
まぁ、他にもね、マムシに咬まれて腕がパンパンに膨れた話とか、ヤマカガシに咬まれて不安のあまり2日ほど不眠症になった話とか、まだまだあるんですが、それはまたそのうちね。
繰り返しますが、咬まれたのは「咬まれた奴が悪い」のであって、生き物は「咬む必要があった」から咬んだだけ、ということを、知っておいてください。
…許さんぞ、アオダイショウめ…。

 

動物好きが集まる婚活イベントはこちら!