アメリカのケーブルテレビ局HBOが製作したドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の最終章が7月に日米同時放映されました。
なにやら賛否両論があったようですが、私はHuluで視聴しているため、最終章の配信は10月まで待たなければならなかったんですね。
ネタバレは聞かないようにしていて、今回やっと観ることが出来て、なんとなく両論があったことに「なるほど~」と思いました。
世界中で爆発的な人気を誇ったこのドラマ。
海外ドラマにあまり興味がない方は見たことがないかもしれませんが、壮大なダーク・ファンタジー大作で、予算のつぎ込み方がもう「えげつない」と言いたくなるほど、妥協のない世界観が作られています。
映画並みのスケールの大きさに、海外ドラマを普段見ない人でも夢中になれると思います。
概要
中世ヨーロッパ風の架空の世界。
ウエスタロスという西側大陸の王都キングズランディングの城にある<鉄の玉座>に座る者が、この大陸の七つの国を統治する王になります。
最初の王であったターガリエン家の娘デナーリスは東側大陸に追放されていましたが、放浪の末、徐々に力をつけ、ドラゴンを従えて「正統な後継者」として<鉄の玉座>を目指します。
前王をクーデターで倒して玉座についたロバート・バラシオンの妻サーセイは、ロバートの死後に自分の子どもたちを王の座に安泰させようとしますが、彼らは数奇な死を遂げ、自分が<鉄の玉座>を継承しました。
物語はこの二人の女王が玉座を賭けて戦うまでの軌跡を追いつつ、北部を統治する<スターク家>の家族と、サーセイの弟・ティリオンを中心に展開していきます。
そして戦いは玉座をめぐるものだけではなく、北部の奥にある<壁>の向こうに生息している<ホワイト・ウォーカー>たち(いわゆるゾンビ)の脅威もありました。
スターク家の家長ネッドはロバート・バラシオンの親友で、王の補佐役である<王の手>になるように言われて王都に行きます。
このため家族はバラバラになり、一緒に王都について行き父の死後も残った長女サンサ、のちに暗殺者となる次女アリア、下半身不随となり北部に残った次男ブラン、の三人と、ネッドの<落とし子>(私生児のこと)としてスターク家で育ったジョン・スノウが、視点人物として物語の中心となっていきます。
作り込まれた世界観
上記の概要を読んでいただいても分かるとおり、登場人物が非常に多く、それぞれ複雑な関係性があるため、最初は混乱すると思います。
第1話が始まる前にもう「この世界にはこういう出来事が以前にあって、だから今はこうなっているんだよ」という設定が存在していて、それが単純なものではないこともストーリーを複雑にさせているんですね。
ただ複雑だからこそ、しっかり作り込まれていて物語に深みがあります。
そこがこのドラマにハマッてしまう部分です。
何人もの視点人物がいて、彼らおよび周囲を取り巻く人々の人生を丁寧に描いています。
作り込んでいるところはストーリーだけではなく、メイキングを見ると美術やデザイン、特殊メイクも細かいところまでこだわっていることが分かります。
ロケハンもかなりのもので、北アイルランドやクロアチアなどを中心に、いろんな国でバラバラに撮影したものを編集で繋げてファンタジーらしい世界に仕上げています。
もちろんCG技術が駆使されているドラマなのでスタジオ撮影が多いのですが、本当につなげるのが大変そうです。
日本のドラマは3ヵ月くらいで終了するものがほとんどですが、海外ドラマは半年周期で放映して何年にもわたって作られる仕組みになっています。
人気によって何シーズン続くか決まるのですが、長く続くとストーリーやキャラクターが破綻して人気を落すことも少なくありません。
だけどこの作品は、2011年から8年間、ずっと人気をキープしてきました。
主要人物ですら途中で死ぬことがあるため「あの登場人物は大丈夫なの?」「次の展開はどうなるの?」と、先読みできないサプライズ展開に、視聴を途中で離脱する人が少ないんですね。
私の友人は最初「ファンタジーはあまり好きじゃない」と言って視聴する気がなかったのですが、好きな声優さんが主要登場人物のひとりの吹き替えをすると知って見始めました。
結局その声優さんの役は途中の章で死んでいなくなりましたが、「続きが気になるから」と言って、好きな声が聴けなくなった後も視聴し続けて最後まで観切ったくらいドハマリしてました。
紹介した私より先にラスト観ちゃうとか…( ;∀;)ちょっと悔しい。
最初は興味がなかった人も、こうして沼に入ってしまう魅力が詰まっています。
演出、技術、演技、シナリオ…すべてのスタッフ・キャストがプロとしての自覚を持って、細部まで妥協なくこだわったからこそ惹きつけるのでしょうね。
ひたむきに生きる登場人物たち
ネタバレしてしまいますが、鉄の玉座をめぐって火花を散らす二人の女王・サーセイとデナーリスは、実に対照的な人生を歩んでいます。
サーセイは名家ラニスター家の長女に生まれ、王妃となってずっと城で暮らして、権謀術数が渦巻いている環境ですが裕福で、ずっとここに留まります。
デナーリスは王の娘ですが、赤ん坊の頃に追放され、唯一生き残った家族・兄のヴィセーリスが鉄の玉座を奪還するための道具として、放浪の民族ドラスク人の長カール・ドロゴに売られる形で結婚させられ、彼女はずっと東側大陸を移動する人生を送ります。
サーセイは双子の弟ジェイミーと愛し合っており、彼との子どもたちに愛情を注いできました。
独裁的な彼女は民衆からは嫌われます。
デナーリスはドロゴと愛し合うようになったけれど彼の死後、各地の奴隷解放に尽力して民衆の支持を得ます。
ドラゴンを飼いならし、自分を慕うダーリオと恋愛関係になりましたが、ウエスタロスに向かうときに彼を東側に置いていきます。
結果ジョン・スノウと最終的に愛し合うようになりました。
※この下、究極のネタバレ要注意
しかしサーセイは好きな人と一緒に死に、デナーリスは好きな人に殺される最期を迎えます。
んむむ~。
ずっと二人の人生を見てきたファンからすると、やっぱりこの二人のラストがモヤモヤする原因なんでしょうね。
サーセイは味方が誰もいなくなってしまったけれどジェイミーが駆けつけてくれ、彼女としてはまだ終わりたくなかったけれど、鉄の玉座にも座れたし、辛さもあったけれどいい人生だったんじゃないかと思います。
でもデナーリス…
彼女の苦難の旅を見てきたから、私も「こんな最期って…。彼女が舐めてきた辛酸って何だったんだろう」と虚無感が胸に去来しました。
鉄の玉座にも座れなかったし(ノД`)・゜・。
感情を抑えられずにジェノサイドやっちゃった彼女が確かに悪いんだけどさぁ…
こんな感じで、感情移入できるほど登場人物たちの人生は深く掘り下げて描かれています。
サーセイやデナーリス、他の視点人物たち、それ以外にも脇役たちの人生も、設定がしっかり決まっているので群像劇としても見ごたえがあるのです。
流転の運命を歩んでいる彼らは、身を置くところも精神的なところも変わっていきます。
初めの頃は弱かったデナーリスやサンサも強い女性になっていきます。
敵対していた相手と協力し合うようになったり…
この人間ドラマは、引き込まれずにはいられません。
まとめ
すごくシリアスな話でエログロありのこの作品。
陰謀渦巻き殺し合いも盛りだくさんなのですが、イベントやオフショットの写真では、キャスト同士の仲が良くて、顔を寄せ合って屈託なく笑っていたり変顔していたり、本編とのギャップにほっこりします。
こういうのを見せるところも隠れた魅力なんでしょうね。
デナーリスの最期に「せっかくここまで来たのに…」と惜しむ気持ちはありますが、このドラマはスターク家の人たちの成長物語だったのだ、と思えば綺麗なまとまり方だと思うし、文句はありません。
最後まで観たところで、また第一章の一話を見返して、みんなの成長ぶりを確認しようと考えています。
みんな若いぞ~♪(当たり前だ)