執筆時はもう秋だというのに春先のことを書いているとは何とも奇妙な気分です。それでも書き起こしているのはこれまでの筆者の旅の中で最も新鮮なままの状態で記憶に残っているからでしょう、そんな旅を経験したのは2019年3月まで遡り、場所はカザフスタン南部でウズベキスタン国境にほど近い南カザフスタン州でのことでした。

拠点はシムケントではなくトルキスタン

 カザフスタン第3の都市であるシムケントは南カザフスタン州の州都で、陸路でウズベキスタンを目指すときなどのチェックポイントとなる都市でもあります。また、首都ヌルスルタンや最大都市アルマトイからのアクセスも良好で、鉄道では停車数の多い運用でなければ片道15時間以内(夜行列車は案外快適なのであっという間です)、飛行機では1時間から1時間半以内で到着です。
 対するトルキスタンはシムケントから鉄道で3時間のところに位置しており、空港はないのでアクセスは陸路のみです。宿泊できるところは数えるほどしかなく、決して便利とは言えませんが市内や周辺に見所が豊富にあるので宿泊場所さえ確保すれば観光拠点としては魅力的な場所です。筆者は民泊を利用して宿主の車を事実上チャーターしました(笑)。
宿主の親戚の家で一緒に朝ごはんを食べたのもいい思い出です。

知られざる世界遺産にして未完のまま

トルキスタン
トルキスタン市内には世界遺産に指定されているホジャ・アフマド・ヤサウィ(Khoja Ahmad Yasaoui)廟があります。先ほど南カザフスタン州はウズベキスタン国境に近いと述べましたがここに居住している人の多くはウズベク人です。そして写真に映っている建物もまた典型的なウズベク式の建築で、それを特徴付けるのがサマルカンドなどでお馴染みの青いドームです。しかしながら生憎筆者が訪れた時はなんと絶賛修復中だったので肝心の青いドームははっきりとは見えなかったので次回の宿題になりそうです。
トルキスタン
廟を裏側から撮影したものになります。ドームに限らずに要所ごとに青色がふんだんに使用されているところが如何にもウズベク式建築といったところです。ここからなら小さい方の青いドームも見えますが本命のドームは見ての通り修復中なのでこの有様です。
トルキスタン
それでは表はどうなのかというと何故かここだけそもそも色がないばかりか骨組みとなっているであろう木材すらむき出しな箇所があります。実はこの廟はついに最後まで完成しないまま今に至ったのですがそれでも役割は強行して果たしています。未完状態で世界遺産というとバルセロナのサグラダファミリアが有名ですがそれだけではないということがお分かりいただけたらと思います。なお、内部は撮影NGのはずなのですが強行して撮影している人の方が何故か多かったですね….。
なお、イスラム圏でいう廟は「廟」本来の意味に加えて祈る場所でもあり、ここトルキスタンの場合は一時期旅人をもてなす場としても機能したそうです。(台所が完備された廟は初めてみました)

春の草原に古代都市の跡

トルキスタン
 青々とし始める春先の草原の中に古代都市は眠っている、実はこの写真の中にその一角が映っています。写真の右側の盛り上がりがまさにその証です。
 その古代都市のあった場所はサウラン遺跡と呼ばれ、トルキスタンよりクズロルダ方面へ50㎞のところにあります。近隣にサウラン村がありますが遺跡はそこではありません。
トルキスタン
 かつて存在していた古代都市としてのサウランは依然として謎だらけで、かろうじて残った城壁の一部以外はまるで原型をとどめていませんが侵略によって滅ぼされたような痕跡がないので人口流出などの要因ですたれてやがて放棄されたと考えられています。実際に中に入ってみても文字通りの草原になっているので史跡を訪れているはずがいつしか遊牧されている馬を観察しながら草原での時間を楽しむ筆者がいました。遺跡の中で馬が堂々と食事しているなんてさすがカザフスタン?です。
トルキスタン
 気が付けば遺跡内は馬だらけで、春先のポカポカな陽気の中で癒される筆者がいました(笑)。

悲劇の都市、チンギスハンの怒り

トルキスタン
今度はトルキスタンから30㎞ほど離れたところにあるオトゥラル(Otrar)遺跡を目指します。ここはチンギスハンの征西のきっかけとなったオトゥラル事件で知られており、かつて存在した都市としてのオトゥラルが遺跡と化した所以でもあります。(現在でも村としてのオトゥラルが近隣にあります)事件のおおまかな経緯としては当時のモンゴルからの外交官がオトゥラルで首長の命令により処刑されたことに端を発し、これに激怒したチンギスハンがオトゥラルを攻め落とすのですがその際に街のほぼ全人口が殺されたというものです。そんな悲劇をこの遺跡は今に語り継いでいます。
トルキスタン
余談ですが近隣にはアルスタン・バブ廟があり、ドームが片側に2つあるという面白い建築物です。

おわりに

いかがでしたでしょうか?今年に入ってから成田とカザフスタンの直行便が新設され、しかもビザも免除されていますからこの機会に南カザフスタンで歴史巡りはいかがでしょうか?