時は遡ってまだ平成最後の3月、学部生から院生へと移行せんとしていた時期、カザフスタンをまわる筆者がいました。モンゴル帝国、ロシア帝国、そして旧ソビエト連邦の影響を受けながら激動の歴史を辿ったカザフスタン、ソ連時代はカザフソビエト共和国としてソ連の一角を担っていました。現在の首都ヌルスルタン(旧アスタナ)はソ連からの独立以後に建設された都市なのでソ連時代の面影はありませんがかつて首都だったアルマトイにいけばロシアにいないのにロシアにいるのではないかと錯覚する場面に出くわすことになるでしょう。
街中に漂うソ連の残光
カザフスタン南東部でキルギス国境にほど近いアルマトイ(かつてはアルマ・アタと呼ばれていた)は旧ソ連期にはカザフソビエト共和国の首都だった都市で、現在のヌルスルタンに遷都した後もカザフスタンの最大都市であり続けています。また、旧ソ連期に構成国としての首都であったことから多くのロシア人が定着することとなり、今でもその子孫が多く暮らしています。そのため、カザフスタンにいながら最もカザフ語が通じにくく、事実上ロシア語が第1言語になりがちです。
市内のパンフィロブ戦士記念公園を訪れるとまず目にするのが旧共産圏では定番の無名戦士の墓です。星印のところから火が出ていますがこれは基本的に消さないようです。それにしても写真中央奥の彫刻が如何にもソビエト風な描写といったところなのですが実際に目にすれば分かります。これ以外にふさわしい言葉が見つかりません(笑)。
ここまでくるともはやまだソ連なんじゃないかと思わせるような建物ですがこの中に政府庁舎があったのでしょうか。これを見るとカザフスタンにいるのかソ連時代のカザフスタンにいるのか分からなくなりそうですがこの星印を見るとむしろ後者のイメージが強くなってしまうのです。
アルマトイ市内のとある一角を映したものです。中央アジアにいるというよりはむしろ(無機質すぎるとはいえ)ヨーロッパかロシアにいるような街並みです。中央アジアはソ連に組み込まれてさらに徐々にロシア化されていっただけのことはあってこのようにロシアを錯覚するような街が多くなっています。
もうひとつ別の角度でソ連の名残を強く感じさせるところがあります。コクバザールという市場です。建物はもちろんソビエト風なのですが中に入るとかなり多くの朝鮮系住民がキムチを売っている光景を目にすることになります。彼らはかつて極東ロシアに移住し、やがてソ連の政策で中央アジアに強制移住させられた朝鮮人の子孫で、日本語では高麗人と呼ばれています。
坂道の街
アルマトイはアルマアタ第2駅から南下すればするほど傾斜がきつくなってきます。写真も大通りで撮ったものですが坂道になっているのが窺えるかと思います。それにしても余談ではありますが映っている絵もまたソビエトプロパガンダ風ですがあれは実はバーガーキングのようです(笑)。
最初にこの街に踏み入れたときは以前に訪れたある街を思いだしました。イランの首都テヘランです。テヘランはアルボルズ山脈の南斜面の部分にできていますがアルマトイの場合は西天山山脈あたりの北側斜面にできています。また、ここは地震のリスクもまた高いところです。最大都市ではありながらも今は首都ではない理由はそこにもあったのかも知れませんね。
アルマトイの背中にシンブラク山
そこはメデウ(Medey)地区になるのですが主にウィンタースポーツリゾートとして有名で、中でも特にスケートリンクが有名です。メデウまではアルマトイ中心部とバスで結ばれており、所要時間は概ね30分です。
スケートリンクで有名なメデウですがメデウの魅力はむしろその先にあります。スケートリンクを素通りすると謎にとても長い階段が現れます。琴平の金毘羅さんに比べればまだましな方かもしれませんが春先だったのでまだ部分的に凍結してたり雪をかぶってる箇所があったので常時冷や汗でした(笑)。それを乗り越えるとそれは極上の一言に尽きる眺めが待っています。
これです!春先なのでまだまだ美しい雪山をおがむことができます。奥にスキー場もあるシンブラク山があり、スキー場入り口までは道も続いているのでそのまま歩くことはできますがスキーをするつもりでなければただ筋肉痛になるだけなのでそこを忠告します。筆者は実際にスキー場入り口まで歩いてみましたが急峻な坂道やらピンカーブやらの連続でしかも部分的に凍結してたりするので生きた心地がしませんでした(笑)。それと後で知ったのですが途中で温泉が湧いているらしいですね。
コクトベの夕暮れ
アルマトイにはもうひとつ訪れておきたい山があります。しかもそこに行かずしてアルマトイに行ったとはいえないような名所で、コクトベというところになります。前項を読んだ後だと「また登山?」と思われるかもしれませんがご安心ください。アルマトイメトロアバイ駅近くから山頂までケーブルカーが直結しています。(もちろん使わないでも行けますがそれはかなり大変なルートになります)
山頂から眺める夕暮れのアルマトイの街並みです。周りはカップルだらけで独身の筆者は少々心細かったですが良い眺めだったので良しとしましょう。それにしても春先なのでやはりまだ寒いです(笑)。
おわりに
いかがでしたでしょうか?街中を見渡せばソ連の名残を感じずにはいられないアルマトイ、ロシアに行ったことがないのにいるように錯覚してしまう不思議な街であると共に少し斜面を登ればそこには雄大な自然がある、自然との距離が近い都市でもあるのです。