アメリカの最新ステルスSTOVL戦闘機であるF-35Bが海上自衛隊の艦艇でも導入されることが発表され、これによって「いずも」型が空母化されることになり、日本でもつい航空母艦を保有することが決定的になりました。
建造や運用に多大なコストのかかる空母は、強力ですが、保有できる国も限られている兵器です。
ここでは、世界の海軍で現在使われている空母をランキング形式で紹介していきます。
第10位 チャクリ・ナルエベト(タイ)
チャクリ・ナルエベトはタイ海軍が運用している空母で、現役空母としては世界最小です。
艦名はタイの現在の王朝であるチャクリー朝からつけられています。
全長182.6m、排水量11485t、速力26ノット、乗員601名(他に陸戦部隊675名も登場可能)で、兵装としてミストラル近接防御SAM(艦対空ミサイル)6連装3基を装備しています。
かつてはスペイン製のSTOVL機であるマタドール攻撃機を搭載していましたが、現在は退役しており、哨戒ヘリの実を搭載したヘリ空母として運用されています。
しかし、財政に余裕がないため運用コストの高い空母はほとんど活動することはなく、訓練の他は王室の移動に使われるくらいです。
内部には王族専用の部屋も用意されていて、「世界一高価な王室ヨット」と揶揄されることもあります。
第9位 ヴィクラマーディティヤ(インド)
ヴィクラマーディティヤは、現在のインド海軍が運用している最大の艦艇です。
空母ヴィラートの退役に伴い、インド初の国産空母であるヴィクラントが就役するまでのつなぎの役割として、ロシアから購入したキエフ級STOVL空母「アドミラル・ゴルシコフ」を改修したものです。
艦名は、「武勇の太陽」という意味で、ヒンドゥー教のシヴァ神が降臨したとされる古代インドの伝説上の王の名からとられています。
全長283.5m、排水量45500t、速力30ノット、乗員1680名で、バラク8短SAMと30㎜CIWS4基を装備し、ロシア製のMiG-29K戦闘機26機やヘリ10機程度を搭載することができます。
ロシア時代に装備していた対空ミサイルや対潜ミサイル、速射砲、魚雷発射管などは撤去されましたが、艦上には着艦用のアングルド・デッキが設置され、機関やレーダーなども更新されています。
第8位 遼寧(中国)
中国海軍初の空母である001型航空母艦「梁寧(リャオニン)」はもともと旧ソ連の空母で、建造中止になっていた「ヴァリャーグ」を改修したものです。
全長304.5m、排水量59439t、速力30ノット、乗員1960名で、HHQ-10近接防御SAM18連装3基や30㎜CIWS、対潜ロケット発射機などを備え、こちらも中国海軍初となる空母用の艦載機J-15戦闘機を24機搭載することができます。
ヴァリャーグは、ロシア語でヴァイキングを意味し、ソ連崩壊によって工事が中断していたものをカジノ船にするという名目で中国が買い取りました。
中国は、他にもいくつか研究用とみられる空母を他国から購入しています。
遼寧は、通常の平甲板空母と違い、スキージャンプ甲板を搭載した空母で、これは原型となったヴァリャーグを踏襲したものですが、これによって発艦時に燃料や兵装を満載できないなど航空機の運用に制限が生まれて空母としての能力には劣るため、中国海軍が空母建造や運用ノウハウを身に着けるための実験的な意味合いの強い艦とみられています。
第7位 カブール(イタリア)
カブールは、ジュゼッペ・ガリバルディに続くイタリア海軍2隻目の空母で、多様な任務に対応することを目的に建造された艦です。
艦名は、イタリアの初代首相でイタリア統一でも活躍したカミッロ・カブールからきています。
全長235.6m、排水量27100t、速力28ノット、乗員841名、短SAM用VLS(ミサイル発射システム)4基、76㎜単装砲2基などを装備し、AB-8BハリアーⅡ8機またはAW101ヘリ12機を搭載することができます。
将来的にはF-35Bの運用も視野に入れており、現在は艤装を更新中で、2023年には作戦認証を受ける予定です。
カブールは上陸作戦の母艦となる強襲揚陸艦としての性格も持ち合わせていて、サン・マルコ海兵連隊325名を搭乗させることができ、艦尾には車両が自走によって船に搭乗することのできるランプウェイを備えるなど高い輸送能力をもち、航空機の代わりにアリエテ戦車24両や装甲車50両を積み込むこともできます。
さらに手術室やベッドなど医療設備も充実していて、災害派遣での活躍も期待されており、実際に2010年のハイチ地震の際には救援活動を行っています。
第6位 001A型航空母艦「山東」(中国)
001A型空母は、2017年4月に進水した中国初となる国産空母です。
002型空母と呼ばれることもあり、どちらが正しい名称なのかは不明で、メディアで艦名は「山東」になると報じられていますが、こちらも公式に発表されたものではありません。
001Aは遼寧よりも大型で、全長315m、排水量67000t、速力31ノット、乗員2500名、兵装として1130型CIWS4基、HHQ-10 SAM18連装発射機3基を搭載し、J-15戦闘機36機とZ-18輸送ヘリ10程度を搭載可能とされています。
飛行甲板は、遼寧と同じスキージャンプ式ですが、傾斜は遼寧よりもなだらかになっています。
アメリカ海軍に対抗できる中国海軍期待の艦として、2019~2020年の間の就役が見込まれています。
第5位 アドミラル・クズネツォフ(ロシア)
アドミラル・クズネツォフはもともとソ連時代に建造されていた重航空巡洋艦と呼ばれる艦で、現在ではロシア海軍唯一の空母となっています。
重航空巡洋艦とは、トルコ領であるボスポラス・ダータネルス海峡における空母の運用が国際条約によって制限されていたため、それをかわすために生まれた艦種です。
スキージャンプ甲板をもつ空母で、全長306.45m、排水量67000t、速力32ノット、乗員1533名で、兵装はグラニート対艦巡航ミサイルVLS12基、キンジャール個艦防御ミサイルシステム24基、コルーチク近接防御CIWS8基、30㎜ガトリング砲など巡洋艦といわれるだけあって充実しています。
もちろん空母としても、Su-33戦闘機15機のほか対潜・救難・早期警戒ヘリなど24機を搭載することが可能です。
艦名は、第二次大戦時のソ連海軍大臣だったニコライ・クズネツォフ元帥からきたものですが、計画時は「ソヴィエツキー・ソユーズ」、建造中は「リガ」とこれまでに3度艦名が変更されています。
2016年にはシリア内戦に投入されて実戦も経験したアドミラル・クズネツォフですが、2017年にロシアに戻って以降は近代化改修工事のため現在まで長期間にわたって係留されています。
第4位 シャルル・ドゴール(フランス)
フランス海軍が運用するシャルル・ドゴールは、2001年に就役したフランス初となる原子力水上艦で、アメリカ海軍を除いては世界で唯一の原子力空母です。
艦名は第二次大戦で自由フランス軍のリーダーとなり、戦後はフランスの大統領にまで登りつめた軍人シャルル・ドゴールからとられました。
全長261.5m、排水量37680t、速力27ノット、乗員1862名で、アスター15短SAM用VLS4基、ミストラル近接防御SAM6連装発射機2基などを装備し、ラファール戦闘機30機に加え、ヘリ6機程度を搭載することができます。
シャルル・ドゴールの原子力機関は、小型のため速度が出せない、原子炉の放射線対策の強度不足など問題点も指摘され、これが原因で就役が大幅に遅れることになりました。
しかし、ヨーロッパ唯一の原子力空母としてアメリカのニミッツ級に次ぐ航空機運用能力をもち、2011年のリビア内戦への介入、2015年のイスラム国への攻撃など実戦経験も豊富です。
第3位 ニミッツ級原子力空母
ニミッツ級はアメリカ海軍の主力空母で、世界で初めて量産化された世界最大級の原子力空母です。
ニミッツ級はこれまでに全10隻が就役していて、数の上でも各国海軍をはるかに凌ぎます。
ニミッツ級は全長317m、排水量101400mと他の空母と比べてかなり巨大で、速力30ノット、乗員5740名で、ESSM短SAM8連装発射機2基や20㎜ファランクスなどを備えています。
世界最大の空母として、F/A18-Eスーパーホーネット50機にヘリを加え最大で70機程度と圧倒的な搭載能力を誇ります。
ニミッツ級は空母打撃群の中心となる艦で、イージス艦や原子力潜水艦とともに10隻程度の艦隊を組んで運用されます。
湾岸戦争やイラク戦争をはじめとして世界各地に派遣されているニミッツ級は、アメリカのシーパワーを象徴する存在です。
第2位 クイーン・エリザベス級(イギリス)
イギリスの最新空母クイーン・エリザベスは、2017年12月に就役したばかりの艦で、イギリス海軍史上最大の艦となっています。
艦名はイギリスがアルマダ海戦でスペインの無敵艦隊に勝利した時の女王エリザベス1世からきており、EとRが描かれた紋章をかつての戦艦クイーン・エリザベスから受け継いでいます。
全長283.9m、排水量67669t、速力25ノット、乗員1600名、ファランクスCIWS3基を装備し、F-35Bを最大36機搭載可能です。
海兵250名や輸送ヘリを搭載することができ、揚陸艦としての運用も考えられています。
次代のイギリス海軍を担う期待の艦で、2番艦のプリンス・オブ・ウェールズもすでに進水しており、2020年代にはアジア・太平洋地域への派遣も予定されているようです。
第1位 ジェラルド・R・フォード級原子力空母(アメリカ)
ジェラルド・R・フォードは、ニミッツ級から更新されたアメリカ海軍の最新原子力空母です。
艦名は第38代大統領で、海軍士官として太平洋戦争にも従軍したジェラルド・・フォードからとられています。
全長332.8m、排水量101605t、速力30ノット、乗員2180名で、ニミッツ級と同等の兵装をもち、航空機とヘリ計75機を搭載することができます。
フォードの原子力機関はニミッツ級よりも性能が向上しているため、新型の電磁カタパルトを運用することができ、炉心燃料の交換も50年に1度でよくなりました。
レーダーや着艦装置、航空機エレベーターなど最新のものが導入されており、将来のアメリカ海軍を担う艦として、2020年から本格配備がはじめられる予定です。