立ち仕事や激しいスポーツをしていると、足の裏に痛みを感じる人がいます。それはもしかしたら足底筋膜炎かもしれません。
足に対する過度な負荷や姿勢のゆがみが原因で起こる足底筋膜炎は性別・年齢を問わず誰にでも起こりえる疾患です。足底腱膜炎がなぜ起こるのかをここで細かく説明します。
足底筋膜炎とは
足底筋膜炎とは、足裏にある足底腱膜という繊維の太い束が、過度な負荷によって痛みを起こす疾患です。
原因
人間の足部は骨がアーチ状に組み合わさっています。そのアーチを支えているのが足裏にある「足底腱膜」で、ちょうど弓道の弓のような形をしています。
足底腱膜に負担がかかりすぎると微小断裂を繰り返し、次第に炎症を起こすことがありますが、それが足底腱膜炎です。
足底腱膜にかかる負荷は大きく分けて2つあります。1つは圧迫力。足裏にかかる荷重や足を着地した時の衝撃は足底腱膜がクッションのように衝撃を吸収する働きがありますが、この力がかかりすぎる事で足底腱膜の限界を超えると痛みが起こります。これは長時間の立ち仕事や、腰が曲がり後ろ荷重乃立ち方になっている人に多いです。
もう1つは牽引力です。足を蹴り出す時にも足のアーチ構造は伸びるように力がかかりますが、この時にも足底腱膜には強い牽引力がかかります。ランニングやジャンプ系のスポーツ、強く踏み出すスポーツをしている人は、反復する足の蹴り出し動作によって足底腱膜が炎症を起こすことがあります。
症状
足底腱膜炎になると、足裏に痛みを感じるようになります。おもに踵から土踏まずにかけて足裏の内側に痛みが起こります。
起床時の歩き出しが最も痛く、歩いていると徐々に痛みが和らぎ歩けるようになりますが、長時間歩いていると、再び痛みがぶり返してきます。
靴を履いている方がラクで、裸足で歩いていると特に痛みを感じやすくなり、症状がひどくなると踵付近に熱感や腫れが現れることもあります。
どんな人に多い
多いのはスポーツをしている人、特にランニングやジャンプ系のスポーツや踏み込む動作の多いスポーツをしている人に多いです。
靴のクッション性能が低いものを使っていたり、硬いアスファルトの上で運動をしているとなりやすいです。他にも長時間の立ち仕事をしている人、特に腰が曲がり、重心が後ろに偏っている人は踵に荷重しすぎる傾向があるので足底腱膜炎になりやすいです。
足首の関節が硬い人や腰の動きが硬い人、ふくらはぎの筋肉が硬くなり柔軟性が低くなっている人も、その分の負担を足底腱膜で受け取ることになるので、過負荷になりやすく足底腱膜炎を発症しやすい傾向にあります。
足底腱膜炎になる人・ならない人
足底腱膜炎はランニングなどの運動や長時間の立ち仕事などで起こりますが、そこには靴のクッション性や重心の位置なども関係していることはおわかり頂けただろう。しかし、ここで一つの疑問が出てきます。それは「同じように生活していても足底腱膜炎になる人とならない人がいるのはなぜ?」という事だ。クッション性のない靴でアスファルトの上を走っていても、後ろ荷重で立ち仕事をしていてもならない人もいるのはなぜか。これは足の構造に原因があるのです。
足底腱膜の重要な役割「巻き上げ機構」とは
足底腱膜炎には「巻き上げ機構」という役割がある。これは足の指を反るように持ち上げた際、足底腱膜が巻き上げられ土踏まずにある足部の縦アーチが持ち上げられる事を言います。
この働きは「歩く」・「走る」・「着地する」「蹴り出す」などの動作で必ず行われており、これによって着地の衝撃を吸収し、蹴り出しの推進力を生み出している。しかし、この巻き上げ機構が正常に働かず、アーチが下がってしまうと、衝撃吸収も推進力も発揮できず足底腱膜に過度な負担がかかることになるのです。
では、巻き上げ機構が働かなくなり、アーチが下がってしますのは、どのような原因があるのでしょう。
過回内?
土踏まずのアーチが下がる最大の原因は「過回内」です。過回内とは、踵の骨である踵骨が内側に倒れ込むことを言い、この状態だと足部のアライメントが崩れアーチが下がってしまうのです。
アーチが下がった状態を「偏平足」と言いますが、偏平足とはつまり、踵骨の過回内によってアーチが下がり、足底腱膜の巻き上げ機構が正常に働かないせいで、足底腱膜に過度のストレスがかかる状態という事です。
もう1つの要因
足底腱膜炎になる人・ならない人を決めるには、もう1つ要因があります。それは腓腹筋の柔軟性です。
腓腹筋とはふくらはぎの筋肉で、膝の屈曲と足首の底屈に関わっています。この筋肉は、同じくふくらはぎのヒラメ筋と一緒にアキレス腱を構成しています。足底腱膜とは全く別の筋肉ですが、なぜ腓腹筋が足底腱膜炎に関与しているのでしょうか。
そもそも筋肉は繊維の集まりで、筋膜という膜に覆われていますが、この筋膜が筋肉同士をつないでいるのです。丁度ソーセージのように、長い筋膜が複数の筋肉を包んでおり、これによって筋肉の緊張が、次の筋肉に伝わるようになっています。
そして腓腹筋と足底腱膜は同じ筋膜で包まれているので、腓腹筋の緊張は足底腱膜に伝わります。腓腹筋が緊張し硬くなっていると、足底腱膜も同じように柔軟性が低下し、足底腱膜炎になりやすくなるのです。
足底筋膜炎以外の足裏の痛み
足裏の痛み=足底腱膜炎とは限りません。他にも足裏に痛みを起こす疾患はあるので、鑑別できるよう説明致します。
踵骨下滑液包炎
滑液包とは、液体が詰まった小さな袋状の組織で皮膚や筋肉、腱が骨と擦れないよう、その間に挟まり衝撃を吸収する働きがあります。
踵骨下滑液包炎とは踵の足底部にある踵骨下滑液包が摩擦によって炎症を起こすもので、ランニングなどのスポーツや歩きすぎによってアキレス腱に負担がかかった時に起こります。また、ハイヒールなど足部に負担のかかりやすい靴を長時間履いていた時にも起こることがあります。
踵の下がズキズキと痛む時は踵骨下滑液包炎を疑いましょう。
種子骨障害
足の親指の付け根には種子骨という小さな骨があります。これは筋肉や腱が動きやすくするための滑車の働きがあるのですが、この種子骨がオーバーワークによって炎症を起こしたものを種子骨障害といいます。
陸上競技や剣道、格闘技など踏み込む動作の多いスポーツで起こることが多く、歩く・走るなどの動作の際、地面をける瞬間に親指の付け根に痛みを感じます。また、症状が悪化すると親指を反っただけでも痛みを伴います。
有痛性外脛骨
足部を構成する骨の1つに舟状骨という骨があります。この舟状骨に余分な骨(過剰骨)があるものを外脛骨といいます。
走っていて急に止まる動作を繰り返すテニスやバスケットボールなどのスポーツをすることで、この外脛骨に炎症が起きたものを有痛性外脛骨(外脛骨障害)と呼び、内くるぶしの前下方に運動中の痛みや圧痛を感じるようになります。
踵骨骨折
地面と当たる踵の骨が骨折したものを踵骨骨折といいます。高いところから飛び降りるなど着地の際に、踵骨が強い衝撃を受けて起こります。踵骨は腕や足の骨と違い、塊となった骨なので、2つに割れるような折れ方でなく、潰れるように骨折を起こします。
踵骨骨折を起こすと、踵を着いただけで痛みが走り、踵部分が腫れ上がり歩行もままならない場合があります。
まとめ
足底腱膜炎は、スポーツをしている人に多く、特にランニングをしている人によく見られるスポーツ障害ですが、スポーツ以外でも日常生活や仕事が原因で発症することもあります。
一般的には靴にインソールを入れるなどの処置をしますが、足底腱膜炎の本当の原因を知っていれば、それだけでは不十分だということはおわかり頂けるでしょう。
足部の骨格的構造とふくらはぎの筋緊張を改善させることが、本当の意味で足底腱膜炎の完治につながるのです。